最新記事

ヘルス

「ソースの2度づけ禁止」は正しかった──5秒ルールより不衛生

2019年1月17日(木)17時40分
松丸さとみ

Steve Debenport-iStock

<「ソースへの2度づけ行為は5秒ルールを違反した場合よりも不衛生」という研究成果を米クレムゾン大学の研究者が発表した>

2度づけしたディップにはバクテリアが「かなりの量」

串カツ屋など、「ソースの2度づけ禁止!」を掲げている飲食店は多い。2度づけを禁止する理由は、「衛生面で好ましくないから」が理由のようだが、実験の結果、これが正しいと証明した科学者がいる。米クレムゾン大学のポール・ドーソン教授と米ノースカロライナ州立大学のブライアン・シェルドン教授で、「2度づけ行為は5秒ルールを違反した場合よりも不衛生」だとオーストラリアの公共放送ABCニュースは伝えている。

ABCニュースによると、ドーソン教授はこのほどABCラジオ・パースに出演。実際にクラッカーと3種類のディップで実験したところ、「一度口に運んだ食べ物を再びディップにつけるのは、自分が思っていた以上に危険な行為だった」ことが分かったと説明した。

ドーソン教授とシェルドン教授は、チョコレート、チーズ、サルサの3種類のディップにそれぞれクラッカーをつけ、どれほどの口腔細菌がディップに転移するかを調べた。

クラッカーやチップスなどをかじる際、口が触れる部分はさほど広くない。そのため教授らは当初、それをディップに戻したところでそんなに多くのバクテリアが移ることはないだろう、と考えていたという。ところが、一度かじったクラッカーをディップにつけた場合、かじらないクラッカーを入れた場合と比べディップ内のバクテリアの数は、1ミリリットルあたり1000個も多かった。

1ミリリットルあたり1000個は、ドーソン教授によると「かなりの量」であり、一般的な風邪菌が人から人へ感染するようなレベルだという。

一方で教授2人は、米ボストンのFMラジオ、WBUR-FMに出演した際、3種類のディップの実験でバクテリアの転移が最も多く見られたのは、サルサ・ディップだったと説明した。サルサ・ディップはチーズやチョコレートのディップと比べサラサラしているため、クラッカーをディップの容器に戻した時にバクテリアが移りやすいのだという。

5秒ルール、カーペットなら意外と安全

ドーソン教授らはまた、「5秒ルール」も検証した。日本では一般的に「3秒ルール」と呼ばれている、「床に食べ物を落としても一定時間内に拾い上げればセーフ(汚くない)」という都市伝説のようなルールだ。英語圏では日本人より少しのんびりしているのか、5秒ルールが一般的だ。

この5秒ルールを検証するために、タイル、木製フローリング、カーペットの3種類の床に食べ物を落として5秒後に拾い上げ、どれだけのバクテリアが移っているかを調べた。

ドーソン教授によると、食べ物が床に触れた瞬間にバクテリアは食べ物に付着する。とはいえ、どれほど付着するかはその床にどれだけのバクテリアがいるかによって異なり、「ロシアンルーレット」のようなものだという。ただしドーソン教授はどちらのラジオ番組でも、「危険な病原菌がいる床はほとんどない」と説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、イスラエルへの兵器輸送一部停止か ハマスとの戦

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中