最新記事

ダイエット

ファスティング(プチ断食)は本当に健康にいい?

2018年6月5日(火)15時30分
カシュミラ・ガンダー

長期的な健康管理のカギはライフスタイルに会った食習慣 C.J. Burton-Corbis/GETTY IMAGES

<ハードル低めの「断食風ダイエット」、ファイスティングの健康効果に専門家も注目しているが、拒食症や過食症のリスクが>

食べたい物を食べながら、健康な体とスリムな体形、長寿を手に入れたい――。そんな願いをかなえてくれそうなのが「インターミッテント・ファスティング(断続的断食)」。確かに魅力的だけど、ちょっと信じられないって? そう思うのも無理はないが、これが最もヘルシーな食事法である可能性を示唆する証拠は増えている。

インターミッテント・ファスティングは食事の時間を限定する食事法の総称だ。例えば一般的な「5:2ダイエット」はカロリー摂取量を週2日だけ500キロカロリーに制限し、残り5日間は推奨量に戻す。「16:8ダイエット」は1日の食事を8時間の枠内に制限。「日替わり断食」は普通の食事と断食を1日おきに繰り返す。

こうしたプチ断食は減量のほか、心臓病や癌のリスク低下、寿命の大幅な延長など健康面で多くの効果が確認されてきた。アラバマ大学バーミングハム校の研究者らは最新の研究で、糖尿病予備軍の男性8人を対象に1日の食事を早い時間に済ませる「eTRF(early time-restricted feeding)」の効果を検証した。

最初の5週間は食事できる時間枠を1日6時間とし、最後の食事は午後3時までに終了。さらに2週間のリセット期間を挟んで、食事できる時間枠を1日12時間に拡大して5週間、計4カ月にわたって実験を行った。こうした臨床実験では珍しく、必要に応じてスカイプも利用し、毎回食事の様子を観察した。

意志の強さが試される

その結果、eTRFは糖代謝率を向上させ、インスリン感受性(インスリンの働きやすさ)も高めるらしいことが分かった。血圧と酸化ストレスも低下した。いずれも体重は落とさずに、だ。

今回の実験は小規模だが、最近提唱されたeTRFを人間で検証した初のケースであり、また非常に厳密で管理された実験手法も栄養学の研究としては異例だと、ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(UCL)健康加齢研究所のジェームズ・キャターソン(今回の実験には関与せず)は指摘する。

これまでの研究でも、断続的な断食の効用は多くの生物で認められていると、キャターソンは言う。「バクテリア、イースト菌、線虫、マウスなどで断続的断食による健康・長寿効果が認められる」

WHO(世界保健機関)が肥満を21世紀最大の公衆衛生上の課題の1つと位置付ける時代だけに、研究者や臨床医は興奮気味だ。「こうした方法なら、食べられない時間は1回連続24時間までなので、それほど口寂しさを感じずに済む」と、英栄養士会のリニア・パテルは言う。「この種の食事パターンなら、カロリーの低い食事ばかりで代謝が落ちるのを予防する効果も期待できる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ゴールドマン、副会長に元ダラス地区連銀総裁のカプラ

ワールド

24年の世界石油需要見通し引き下げ、生産予想は上方

ビジネス

AI、政策金利を決める判断力はない=シンガポール中

ワールド

米政府、ファーウェイ向け半導体などの製品輸出許可取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中