最新記事

日本社会

高齢ドライバー急増で灯る日本全国の危険信号

2019年5月15日(水)17時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

高齢ドライバーによる運転事故が全国で相次いでいる maroke/iStock.

<21世紀に入ってからの約20年で、75歳以上の運転免許の保有者数は3.4倍に急増>

高齢ドライバーによる運転事故が全国で相次いでいる。先月19日には、東京池袋で87歳の男性が運転する車が暴走し、横断歩道を渡っていた母子をはねて死亡させる事故が起きた。

高齢になると運動能力や判断能力が低下して事故を起こしやすくなるが、高齢化の進行に伴い、高齢ドライバーの絶対数は増えている。警察庁の『運転免許統計』によると、75歳以上の運転免許保有者は2001年では154万人だったが、2018年では528万人になっている。約20年で3.4倍に増えた。

これは実数だが、2018年の75歳以上人口(1798万人)に占める割合にすると29.4%となる。現在では、後期高齢者の3人に1人が何らかの運転免許を保有している。免許を持っているだけで運転しない人もいるが、高齢ドライバーの数の指標にはなる。この数値を都道府県別に計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。

maita190515-chart01.jpg

長野県と群馬県では4割を超えている。これらの県では100メートルほどの移動にも車を使うと言うが、ここまで生活に染みついていると、高齢になっても免許を手放すのはためらわれるのだろう。

一方、都市部では保有率が低くなっている。東京都では16.2%でしかない。交通網が発達しているので自家用車の必要性は低く、土地が高いので維持費もかさむためだ。高齢者の免許保有率は、おおよそ都市化の度合いと逆相関の関係にある。

地方では80歳、90歳を過ぎてもハンドルを握る高齢者が多いが、「小さい子をひきはしないか」と家族は気が気でなく、幼児の親は「この子が高齢者の暴走車にひかれはしないか」と気をもんでいる。幼児の場合、危険回避もままならない。

2018年の5歳未満人口は484万人で、高齢ドライバーは先ほどみたように528万人だ。前者に対する後者の百分比は109.1となる。都道府県別に出すと、トップは秋田県の203.6、その次は長野県の193.8となる。これらの県では高齢ドライバーが幼児人口の2倍ほどいる。悲惨な事故が起きないよう対策を講じる必要性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中