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子どもを肥満にさせる「欠食・孤食」と家庭間格差

2019年3月27日(水)15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

こうした食生活の歪みは貧困家庭で起こりやすく、家庭環境とリンクした「健康格差」現象も生じている。貧困と肥満の関連を示した公的な調査はないが、東京都内の地域統計からそれをうかがい知ることはできる。小学生の「肥満傾向児率」を都内23区別に計算し、地図に落とすと<図1>のようになる。大都市・東京の子どもの肥満率マップだ。

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0.21%から2.34%までの開きがある。相対水準で23区を塗り分けると地域性が明瞭で、北部が濃い色で染まる。台東区、墨田区、板橋区、足立区、葛飾区では、小学生の肥満率が2%を超える。23区の小学生の肥満率は、住民の平均世帯年収とマイナスの相関関係にある。貧困と肥満の結びつきのマクロ的な関連を表している。

肥満と貧困の関連については、アメリカでよく指摘されている。貧困層は安価でカロリーの高いジャンクフードに依存しがちなため、肥満になりやすいという。それと似たようなことが日本で起こってもおかしくない。母子世帯の貧困を特集した番組で、来る日も来る日も100円ハンバーガーやポテトチップを夕食にしている子どもを見たことがあるが、その典型的な例だろう。

ここで学校における食育が重要な役割を果たすことになる。また学校保健安全法では、健康上の問題がある児童・生徒に対して必要な指導を行うことと定めている(第9条)。いわゆる保健指導だが、その対象には保護者も含まれる。必要な場合、このような機会を設けて、保護者の意識を高めていく必要がある。

「食」に関する子ども自身の意識の啓発も欠かせない。子どもは学習者である前に「生活者」だ。食育や子ども食堂の実践が広がっているが、生活の根幹である「食」をコアに据えて学校のカリキュラムを編成するのも一つの考えだ。

<資料:厚労省『第13回・21世紀出生児縦断調査』(2014年)
    『東京都の学校保健統計』(2018年度)

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