最新記事

米中対立

アメリカ、今年の環太平洋合同演習に中国ではなく台湾を招待か

U.S. Act May See Taiwan Replace China at World's Largest Naval Games

2020年6月29日(月)17時55分
トム・オコナー(外交・軍事担当)

2018年7月、リムパック参加のためハワイに到着した海上自衛隊の護衛艦「いせ」U.S. Navy/ Natalie M. Byers/ REUTERS

<南シナ海や台湾をめぐる米中対立が激しさを増す中、世界最大の海軍演習には台湾を招くよう米上院軍事委が要請>

台湾外務省は6月26日、米上院軍事委員会に所属する議員らに対し謝意を表した。台湾の英字紙タイワン・ニュースが伝えた。今年の米国防権限法の草案に、世界最大の海軍演習である環太平洋合同演習(リムパック)に台湾を招待することが盛り込まれたからだ。

23日に公表されたこの草案では、「必要に応じてリムパックや(カリフォルニア州)フォートアーウィンの国立訓練センターにおける合同訓練や2カ国の海軍演習や訓練など、実用的な訓練や軍事演習を行う」など、台湾との軍事関係の強化が掲げられている。

正式な外交関係のない米台のこうした動きは議論を呼ぶかも知れない。中国政府は一貫して、台湾を中国の一部だと主張している。

かつては中国もリムパックに参加したことがあり、前回2018年のリムパック(26カ国が参加)にも招待されていた。ところが中国が南シナ海の小島やサンゴ礁の軍事化を進め、ミサイルシステムや電波妨害設備を配備したため、アメリカは招待を取り消した。以来、戦略的に重要な南シナ海などの海域における(そして台湾の主権の問題をめぐる)米中間の緊張は劇的に高まっている。

台湾海峡で米中の緊張高まる

台湾国防省の報道官は26日、国営中央通訊社に対し、台湾南西の防空識別圏に中国軍機が短時間侵入したと明らかにした。同じニュースは中国共産党機関紙人民日報系の新聞、環球時報でも、周辺での米台の軍事行動を妨害するための行動だとする専門家の発言とともに伝えられた。

一方、北京大学海洋研究所の台湾周辺の米軍機の動きを記録するプロジェクト「南シナ海調査イニシアティブ」は25日、米軍のEP-3EエアリーズII偵察機がP-8A対潜哨戒機とKC-135給油機を伴って台湾の南上空を飛行していたと明らかにした。

また同イニシアティブでは、米軍のP-8AとP3-C対潜哨戒機およびRC-135偵察機が台湾とフィリピンの間のバシー海峡近くを飛行する動きも監視したという。こうした米軍の作戦行動は中国政府の怒りを招いている。

中国人民解放軍の報道官は24日の記者会見で「台湾は中国の不可分の一部だ。台湾問題は純粋に中国の内政問題であり、外国からの干渉は一切認められない」と述べた。

<参考記事>傲慢な中国は世界の嫌われ者
<参考記事>中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで浮上する第2の道とは

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中