最新記事

米メディア

新型コロナでテレビニュースは再び黄金時代を迎えたのか?

CHASING THE GHOST OF WALTER CRONKITE

2020年6月27日(土)14時00分
ポール・ボンド(カルチャー担当)

ABC、NBC、CBSの3大ネットワークのニュース番組の視聴率は軒並み上昇している PHOTO ILLUSTRATION BY GLUEKIT

<パンデミックでニュース番組の視聴率が上昇中、不信と分裂の時代にかつての権威を取り戻せるか>

これは「私たちにとっての真珠湾(攻撃)だ、私たちの9.11同時多発テロだ」。テレビでそう叫んだのは(ドナルド・トランプ米大統領ではなく)ABCの看板キャスター、デービッド・ミュアー。4月6日の『ワールドニュース・トゥナイト』でのことだ。

この日、ニューヨーク市内では新型コロナウイルスによる死亡者が3000人を超え、9.11テロの全米犠牲者数を上回っていた。

その晩の視聴者数は推定1200万人。そしてその週の終わりまで、ミュアーの番組は同じ時間帯に放送されたどんな番組よりも高い視聴率を維持した。伝説のニュースキャスター、ウォルター・クロンカイトでさえなし得なかった快挙である。

とにかくみんな、テレビのニュースに食い付いていた。ABCだけではない。NBCの『ナイトリーニュース・ウィズ・レスター・ホルト』もCBSの『イブニングニュース・ウィズ・ノラ・オドネル』も、たいていの娯楽番組より視聴率を稼いだ。

3月半ばから4月26日までの6週で見ると、ABCのニュース視聴率は前年同期比48%増、NBCは37%増、CBSは24%増。ケーブル局のCNNやFOXニュース、MSNBCも絶好調だった。

5月に入っても流れは続いた。視聴者の増加は「国の現状を映している」とミュアーは言った。「健康への深刻な脅威があり、経済が崩壊し、指導者の資質が問われている。めったにない状況だから、みんな信頼できる情報源を求めている」

TVニュースを取り巻く環境は、クロンカイトの君臨した時代から一変した(ミュアーの獲得した視聴者は1200万人だが、全盛期のクロンカイトはその倍以上の視聴者を集めていた)。それでも新たな殺人ウイルスと共存する時代を視野に、夕方のTVニュースを復権させ、時代の求める報道番組に再生させようと模索する人たちがいる。

「新型コロナウイルスの問題は深刻で、その影響は長引くからニュースは必見だ」と本誌に語ったのは、ABCニュースのジェームズ・ゴールドストン社長。「夕方のニュース番組は、人々の求める情報を伝える効果的な場所だ。以前にも増して価値のある存在になっている」

<参考記事:米南部の感染爆発は変異株の仕業?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中