最新記事

欧州

仏独、約60兆円規模でEU新型コロナ復興基金提案 返済義務なし

2020年5月19日(火)11時01分

フランスとドイツは18日、新型コロナウイルスの打撃を受けた加盟国への支援として、5000億ユーロ(約60兆円)規模の復興基金の創設を提案した。ベルリンで2017年5月撮影(2020年 ロイター/PAWEL KOPCZYNSKI)

フランスとドイツは18日、新型コロナウイルスの打撃を受けた加盟国への支援として、5000億ユーロ(5460億ドル)規模の復興基金の創設を提案した。

仕組みとしては、貸付(ローン)ではなく供与(グラント)の形で各国に資金を配分。資金の手当ては欧州委員会が行えるようにし、欧州連合(EU)名義による金融市場での借り入れを容認する。また、資金は欧州の共通予算の下で返済する。

フランスのマクロン大統領は「今回の提案は非常に大きな変化をもたらすが、EUやユーロ圏が引き続き1つにまとまるのに必要」と強調。また、提案の策定に当たりイタリアやオランダとも事前調整を行ったことを明らかにした。

ドイツのメルケル首相は5000億ユーロの返済期間は長期に及ぶ見通しで、通常のEU予算と同様、ドイツの負担割合は約27%になると指摘。「欧州なりの方法でコロナ危機を脱却し、力をつけなければならない」と述べた。

欧州委は来週27日に復興基金に関する独自案を提示する。フォンデアライエン欧州委員長は、仏独の提案を歓迎するとした上で、欧州委の提案は仏独案と方向性は同じだが、全加盟国および欧州議会の考えも考慮するとした。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は18日、欧州4紙の合同インタビューに応じ「仏独の提案は野心的かつ的を絞ったもので、もちろん歓迎する」と発言。新型コロナ危機で最も打撃を受けた加盟国への多額の直接支援を可能にし、EUの結束を示すものだと語った。

総裁は一方で、ドイツの憲法裁判所が今月、ECBが資産買い入れプログラムの必要性を証明できなければ、ドイツ連銀(中銀)は国債買い入れを停止すべきとの判断を下したことについては、ドイツ連銀はEU協定に基づきECBの決定に従う義務があるとした。

ECBが資産買い入れの必要性を証明できない場合、ドイツ連銀はEU協定下での義務とドイツ憲法裁の判断の板挟みになりかねない。

*内容を追加しました。

[パリ/ベルリン/フランクフルト ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする論文が登場
・韓国政府、「K防疫」の成果を発信する最中に集団感染が再発
・トヨタ、国内工場は6月も生産調整 工場稼働状況まとめ
・緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相


20200526issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中