最新記事
コミック

日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

BEHIND MANGA MANIA

2024年4月26日(金)18時05分
澤田知洋(本誌記者)
パリの書店に並ぶ日本マンガ

外国の書店に漫画があるのは今や珍しい光景ではない(パリの書店、2022年) RICCARDO MILANI-HANS LUCAS-REUTERS

<『SPY×FAMILY』や『鬼滅の刃』など、北米市場の45%を日本作品が占める「波」はどう生まれたのか、翻訳者・兼光ダニエル真が語る>

近年、海外では日本のアニメに加え漫画の売り上げが、特に北米で飛躍的に増加している。背景にあるのはどのような事情か、30年以上にわたり日本の漫画やアニメ作品を英訳してきた翻訳者で、欧米やアジアのオタク事情やビジネスに詳しい兼光ダニエル真に本誌・澤田知洋が聞いた。

◇ ◇ ◇

──北米市場で、コロナ禍を機に『鬼滅の刃』など漫画の売り上げが急激に伸びている。これはなぜか?

コロナ禍の巣ごもり需要を背景にネットフリックスなど配信サイトでアニメ視聴が増加し、その原作を買い求める動きが定着しつつあることが大きい。米メディアICv2が種々の統計を横断的に調査したところ、2022年にコミック市場で売られた作品の45%が日本の漫画だった。市場の急成長に日本の作品が大きく寄与している計算で、驚異的だ。

北米でこれほど外国のポップカルチャーがオタク層以外にも広まった例はかつてないのではないだろうか。ニューヨークのマンハッタンで昨年、『スパイ×ファミリー』の劇場版アニメのポスターが街角のさまざまな場所に大々的に掲示されているのを目撃して、一般層への広まりも実感しているところだ。もともと北米である程度市民権を得ていたが、今は日本アニメ・漫画の「波」がよりいっそう高まっている状態だとも思う。

ただこれは一部で言われているように、いわゆる「アメコミ」から日本の漫画に読者が流れているわけではないと思われる。アメコミは一般的にイメージされるDCコミックスやマーベル・コミックスなどスーパーヒーローもの以外の作品のほうが実は流通量は多く、また日本の漫画と違い書店以外の販路もある。それら全体の売り上げが著しく落ちているわけではない。

同様に、最近日本や北米でも勢いのある韓国発のウェブ漫画の形式「ウェブトゥーン」にしても日本の漫画読者を奪っているというより、紙の漫画を読む習慣のない、スマートフォンでの縦読みに慣れた層をどんどん取り込んでいると見ている。

アメコミやウェブトゥーンとともに日本の漫画を楽しむ人も多いだろうが、基本的には一種の棲み分けが成立していると思う。とはいえ、ハリウッドでアメコミの実写化作品がヒットしても、それが原作漫画の売り上げに転化していないのは確かだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

欧州首脳、中国に貿易均衡と対ロ影響力行使求める 習

ワールド

ロシア、英軍施設への反撃警告 ウクライナ支援巡る英
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中