最新記事

対談

トイアンナ×田所昌幸・師弟対談「100年後の日本、結婚はもっと贅沢品に」

2020年1月8日(水)15時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

asteion91_200107talk-2.jpg

田所昌幸(たどころ・まさゆき)/慶應義塾大学法学部教授。専門は国際政治学。主な著書に『「アメリカ」を超えたドル』(中央公論新社、サントリー学芸賞)、『越境の政治学』(有斐閣)、『社会のなかのコモンズ――公共性を超えて』(共著、白水社)他。論壇誌『アステイオン』編集委員長も務める。(写真:遠藤 宏)

世界的な「非婚」トレンドがさらに高まっていく?

田所 ジェンダーはあなたがよく執筆されている分野です。

アンナ 私は学者というよりはアクティビストに近く、棍棒を振り回している人間ですね(笑)。

田所 あなたは、アクティビストとしてはどういうポジションになるのですか?

アンナ 男女差別とは、男性と女性を差別する仕組みであるという立場です。

田所 一般的なフェミニズムみたいに、女性が可哀想だからなんとかしようというポジションとはそこが違うのですね。

アンナ:はい。

田所 そうすると、フェミニズムの人からずいぶん批判があるのでは?

アンナ もう、マッチョイズムの方々と、フェミニストの方々の、両サイドからボコボコにされています(苦笑)。

田所 マッチョイズムからも来ますか?

アンナ はい。私なんかを説得しても何の得にもならないでしょうに(苦笑)。でも、すごくありがたいですね。

田所 今回、アンナさんに寄稿してもらった「ぜいたくは敵だから、結婚しません」は、とても面白かったです。結婚は贅沢品になり、確率的にも非常に難しくなっていく。今後もそうなるだろうという話でした。

確かに結婚や、それに関連する一夫一婦制、家族といった制度自体が100年も経つと、かなり意味を変える可能性はありますよね。

アンナ 特に日本では、「結婚せねば子供は産めない」という認識やシステムがこの100年間でかなり強固に築かれたと思っています。それがこれから100年で変わる可能性があるだろうと。

田所 結婚しなくても恋愛はできますが、今後、恋愛はやりやすくなるのか、やりにくくなるのか。どう考えていますか?

アンナ 直近では、恋愛しにくくなると思います。日本の男性がなぜいまだに激怒しないのかが、不思議なくらいです。

男女平等が極端に進んだ先進国では、一夫多妻制に近づいています。女性が優れた男を求めるようになるので、優れた男性が女性を寡占する状態が起きます。上位1~2割の男性が女性全体の8割を持っていき、残り8割の男性は自分と同じくらいのレベルの女性から「アンタなんかお断りよ」って言われてしまうという......(苦笑)。

田所 欧米では離婚がしょっちゅう繰り返されているので、事実上多夫多妻制ですね。不倫なんかしなくても、離婚して時間差で多夫多妻制を正々堂々とできるわけです。

アンナ そうなると、世界的なトレンドとして、「非婚」はさらに高まっていくはずです。国が少子高齢化の対策を打つならば、結婚と出産を切り離すフランス型へと移行していくだろうと思います。

田所 「通い婚」はどうでしょうか。「今日はどこ行こうかな」と、ときどき夫か妻がやってくる『源氏物語』の世界なら。

アンナ そうなると格差が固定される、と答えようと思いましたが、今の状況ですでに格差が固定されつつあるので、「通い婚」で特に変化は起きないかもしれません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダの原油パイプライン拡張完了、本格輸送開始

ビジネス

豪NAB、10─3月キャッシュ利益13%減 自社株

ワールド

ウクライナ、今冬のガス貯蔵量60%引き上げへ

ワールド

ソロモン諸島、新首相に与党マネレ外相 親中路線踏襲
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中