最新記事

胎児内胎児

女性のお腹で次第に成長するしこりは、双子の片割れだった

Woman Had Twin Growing Inside Her, With Teeth and Bones Found in Abdomen

2019年8月28日(水)16時20分
ハナ・オズボーン

お腹のなかでは、双子のきょうだいが育っていた Mansi Thapliyal-REUTERS

<お腹から出てきたのは「毛の生えたチーズのような塊」で、歯や骨もあった>

インドに住む17歳の女性の腹部で、その女性の「双子のきょうだい」が育っていたことが明らかになった。女性の手術を執刀した医師によれば、長さ35cmほどの塊から、骨、歯、毛髪、さらには「その他の身体部位」が確認されたという。今回見つかった「胎児」の大きさは、過去最大だろうと医師らは述べている。15歳以上の女性で発見されることも珍しい。

この女性は、腹部の痛みを訴えて病院を訪れた。腹部には5年ほど前からしこりがあったが、徐々に大きくなり、断続的に痛みが生じるようになっていた。

全インド医科大学の医師らが検査したところ、腹部全体に影響を及ぼしている塊は、固く、不規則な形であることがわかった。さらにCTスキャンなどの検査で、塊には軟組織、椎骨や肋骨らしきもの、さらには石灰化した身体の部分が含まれていることが明らかになった。

医師チームはこの検査結果から、女性の症状は「封入奇形胎児(胎児内胎児、FiF)」の可能性があると判断した。FiFは発達異常の一種。原因はわかっていないが、子宮内で双子の片方が他方を吸収した結果として生じる可能性があると考えられている。別の説では、FiFは極端なタイプの奇形腫(胚細胞性腫瘍)だとされている。これは、胚細胞(卵子,精子)のもとになる細胞(原始生殖細胞)が腫瘍化したもので,毛髪、筋肉、骨などを含む場合がある。

<参考記事>介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

胸部や陰嚢から見つかる場合も

FiFが最初に報告されたのは18世紀末のこと。以来、200足らずの症例が医学文献に記録されてきた。ほとんどの症例では、こうした「胎児」は腹部で発見されるが、胚細胞性腫瘍は身体のどの部位にもできる可能性がある。過去には、胸部、陰嚢、口腔、骨盤にできた症例も報告されていると、全インド医科大学の医師チームは指摘している。

最もよく知られているのは、子どもの体内で発見されるケースだ。2019年3月にはコロンビアで、ある女性が出産した赤ん坊の腹部で、双子のきょうだいが育っていたというニュースが流れた。妊娠中から判明しており、誕生の翌日、赤ん坊の体から双子のもう一人を摘出した。双子の大きさは5センチ余りで、頭と手足はあったが心臓と脳はなかったという。

<参考記事>女性が怯えて生きるインドのおぞましい現実

15歳を越える人でFiFが見つかったケースは7例しかなく、珍しい。症例共有サイト「BMJケース・リポーツ」によると、2015年4月には26歳の女性の脳から骨、髪、歯のある「胎児」が見つかったケースなどがある。

今回のケースでは予備診断後、医師チームは手術を行い、「毛の生えたチーズのようなものからなる」塊を発見した。歯や、四肢の原型と見られる構造もあった。さらに、毛髪や成熟した骨のほか、腸組織や皮膚組織など、その他の身体部位も見つかった。医師らは塊を除去し、女性はFiFから回復しつつあると発表した。塊の大きさは36×16×10cmで、医師チームによれば、記録に残るFiF症例のなかでも最大だという。

(翻訳:ガリレオ)

20190903issue_cover200.jpg
※9月3日号(8月27日発売)は、「中国 電脳攻撃」特集。台湾、香港、チベット......。サイバー空間を思いのままに操り、各地で選挙干渉や情報操作を繰り返す中国。SNSを使った攻撃の手口とは? 次に狙われる標的はどこか? そして、急成長する中国の民間軍事会社とは?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入の有無にコメントせず 「24時間3

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中