zzzzz

最新記事

貿易戦争

米財務省、1カ月遅れで為替報告書公表 日本への指摘と新たなリスク

2019年5月30日(木)14時00分

5月28日、米財務省は半期に1度の為替報告書を公表した。内容自体にサプライズはなかったものの、通常よりも約1カ月遅れとなった公表タイミングには政治的な「匂い」がするとの見方も多い。2017年6月撮影(2019年 ロイター/Illustration)

米財務省は28日、半期に1度の為替報告書を公表した。内容自体にサプライズはなかったものの、通常よりも約1カ月遅れとなった公表タイミングには政治的な「匂い」がするとの見方も多い。批判の多くは中国に向けられているが、日本に対しても厳しい指摘が続いており、多難な日米通商交渉の序章となる可能性もある。

暗礁に乗り上げた米中交渉

報告書では中国に関する記述に多くが割かれている。

中国には巨大かつ持続的な対米貿易黒字があり、非関税貿易障壁、市場経済ルールに基づかない慣行、補助金その他によって、貿易と投資の両面で2国間の関係を歪めていると批判。

さらに自国通貨安を対外貿易上、優位な立場を得るために使わないという20カ国・地域(G20)のコミットメントを中国が順守する事を求めた。

また、中国当局は金融セクターのリスクを抑制しつつ経済成長を目指すべきであり、投資と輸出依存の経済を改め、内需を喚起すべきなどと、国内政策にも注文をつけている。

上半期の米為替報告書は通常、4月半ばに公表されることが多かったが、今回は5月後半。1カ月以上遅れた背景には、米中通商協議の行き詰まりがあるとの見方がもっぱらだ。「報告書は米中通商協議の結果待ちだったと思うが、両国の協議が暗礁に乗り上げたので、このタイミングまでずれ込んだのではないか」(国内銀行)とみられている。

トランプ大統領は27日、中国とディールする用意はないとし、中国との通商協議がデッドロックに陥っていることを示唆。世界的に金利低下と株安が進むリスクオフの一因となった。

米国の新ルール

米財務省は、今回から監視対象国の基準を厳しくしている。従来は、財貿易額の上位12カ国を抽出していたが、財の対米貿易が年間400億ドルの国に切り替えた。この結果、この条件による対象国は、これまでの12カ国から21カ国に広がった。

また、為替操作国および監視対象国を判断する基準は3つあるが、そのうち2つが厳しくなっている。

1)財の対米貿易黒字の200億ドル以上は据え置かれたものの、2)経常収支の黒字額が対国内総生産(GDP)比で3%超から2%超に変更、3)過去12カ月のネット外貨購入は対GDP比2%超で据え置かれたが、継続的な介入と判断する期間はこれまでの8-12カ月から6-12カ月に短縮──となった。

このうち2つに抵触すると監視対象国、3つに抵触した場合は為替操作国に認定されるが、このうち中国に当てはまるのは、1)の米貿易黒字のみ。このままでは「圧力」はかけにくい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 5

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中