最新記事

日本社会

カルロス・ゴーン逮捕に見る日本の司法制度の異常さ

2018年12月7日(金)18時58分
レジス・アルノー(『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員)*東洋経済オンラインからの転載

東京拘置所に入っているゴーン氏にとってこの冬は厳しい寒さになりそうだ  REUTERS

元日産自動車会長兼CEOのカルロス・ゴーン氏が逮捕されたことで、日本の司法制度に世界の注目が集まっている。海外のマスコミは特に、東京地検特捜部がゴーン氏を軽率に逮捕したという批判を強めている。中でも辛辣なのが、2018年11月26日にウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された「ゴーンへの審問」という記事だ。

「かつて会社の救世主としてもてはやされたCEOは、財務上の不正行為を働いたという内容がメディアを通じて漏れ聞こえてくる中、空港で逮捕され、起訴されることなく何日間も勾留され、弁護士の立会いなしに検察から尋問を受け、地位を追われた。共産主義の中国で起きたことではない。資本主義の日本で起きたことだ」

警察署ではなく、拘置所に送られたワケ

今回の逮捕劇は、日本に進出する外資系企業のトップにも大きなショックを与えている。「ゴーンの逮捕はありえないほど乱暴に行われた。羽田空港で10人もの東京地検特捜部の係官とテレビカメラが待ち構えているなんてことは、日本ではめったに起こらない」と、フランス企業アトスのティエリー・ブルトン会長兼CEOは話す。そしてその恐怖は日本人も同じように感じているのではないか。

日本のメディアの中には、こうした海外の反応を過剰と捉えているところもある。そうしたメディアは、法務省の職員や弁護士の話を引用して(ただし、元被勾留者の話は引用していない)、ゴーン氏が置かれている状況は常軌を逸したものではないと説明している。

だが、実際の状況は勾留経験者でないとわからないかもしれない。そこで、今回は複数の勾留経験者に話を聞き、ゴーン氏が実際にどのような生活を送っているのかを推察してみたい。

日本では、逮捕されると、東京・葛飾区小菅にある東京拘置所のような拘置所で勾留されることになっているが、実際は警察署に拘束されることが多い。容疑者を近くに置いておくことができるので、捜査機関にとって都合がよいのだ。ゴーン氏の場合、担当の検察官はゴーン氏を小菅に送った。

このことについて、頻繁に小菅を訪れている佃克彦弁護士は「おそらく、ゴーン氏がよく知られている人物であるため、検察は法律の条文に従いたかったのだろう。理論上は、身柄の拘束に警察署を使用すべきではない」と語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中