最新記事

中国

日朝極秘接触リークの背後に日米離間を狙う中国が――米国の対中制裁の抜け道を日本に求める

2018年9月3日(月)10時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

鈴木氏は「風雲永田町」のコラムを約6000回にわたって書き続けてきた永田町関係のベテラン政治評論家だ。日本で、いや世界で、鈴木氏以外に永田町情報を詳細かつ正確に把握している人物はいないだろう。したがってコラムの信憑性は高く、むしろ「証拠は握っている」が、事の重大性に配慮し、敢えて「疑問形」あるいは「譲歩形」にして、抑制的に書いていると感じた。

なぜ韓国はリークしたのか?

それなら、なぜ韓国はリークする必要があったのだろうか?

せっかく極秘で、そしてきっとかなり苦労して日朝を結びつけたはずである。

だというのに、なぜ、明らかに日本を苦境に陥れると分かっている情報を漏らしてしまう必要があったのだろうか?この情報をリークしてしまうことによって、韓国に何かメリットがあるかと言えば、日本との信用を落して損するだけで、表面上は「メリットはない」ように見えるだろう。良識的な論理から言えば、そうなる。

しかし、別の角度から周辺情勢を俯瞰すると、全く別の国際情勢が見えてくる。

まず、日本がどのように困るかと言うと、「日米関係に溝ができてしまう」ことである。

では、「日米関係に溝ができた場合に、喜ぶのは誰か」を考えてみよう。

しかも「韓国に指示できるのは誰か」という束縛条件も外すわけにいかない。

となると、正解は「中国」という線が浮かぶ。

いや、「中国」以外にないだろう。

中国は今、非常にせっぱ詰まった状態で、なんとか「日米離間」を図っている。

なぜか?

その謎解きを試みる。

中国は米国による対中制裁の抜け道を日本に求めている

トランプ政権の中国に対する高関税と禁輸制裁は、激しく燃え上がるばかりだ。その内容は多くのメディアが書いているので、ここでは省略する。

今般の分析で焦点を当てなければならないのは、ザッと分類すれば以下の二点だ。

一、米国が対中輸入品に高関税をかけるターゲットはハイテク製品である。

二、米国は、中国がハイテク製品生産に必要な半導体や半導体製造装置などの電子部品の対中輸出を禁止あるいは規制する。なぜなら、米国が中国から輸入するハイテク製品の90.9%がスマホやパソコンであり、それらには米国の軍事情報を含めた機密情報を奪取する機能が填め込まれており、さまざまなスパイ行為やサイバー攻撃などが可能になっているからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習中国主席、フランス・セルビア・ハンガリー訪問 5

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中