最新記事

中国

日朝極秘接触リークの背後に日米離間を狙う中国が――米国の対中制裁の抜け道を日本に求める

2018年9月3日(月)10時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の習近平国家主席 Damir Sagolj-REUTERS

7月の日朝極秘接触をリークしたのは韓国だと鈴木棟一氏が書いているが、その背後に日米離間を狙う中国の影がちらつく。中国は米国の制裁逃れの抜け道を必死で日本に求めている。その証左に露骨な対日懐柔策を見よ!

日朝極秘接触をなぜ米国は不快に思ったのか?

米国のワシントン・ポスト電子版は7月28日、複数の米政府高官の話として、日本の北村内閣情報官と北朝鮮統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長が7月にベトナムで極秘に接触したと報じた。複数の米政府高官は、「北朝鮮情勢をめぐり、米政府側は常に最新情報を日本側に提供しているにもかかわらず、日本政府が接触の事実を事前に伝えなかったこと」に不快感を示したという。

特に拉致問題に関して、安倍首相は何度もトランプ大統領にお願いして、6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談で、必ず金正恩委員長に話をしてくれと頼んだ。だからトランプは初めての会談で、金正恩が最も嫌がることを持ち出すのは本意ではなかっただろうが、それでも安倍首相の懇願を聞き入れて、金正恩に拉致問題に関して言ったようだ。

それなのに翌月には、あたかも「トランプの力を信用していないかのように」、日本が直接、北朝鮮と接触し、「おまけにそれをトランプには事前に知らせなかったこと」を8月になってようやく知ったトランプは、きっと激怒したにちがいない。

しかしさすがに「100%共にある」と誓い合った「安倍・トランプ」関係だ。いつものように反射的に「安倍よ、お前は100%俺とともにいると言ったではないか。だから俺に不利になるのにもかかわらず、約束を守って金正恩に拉致問題を提起したのだ。だというのに、この俺様をよくも裏切ったな!」とツイートするわけにはいくまい。

そこで怒りの収まらないトランプが、周辺の米政府高官らに、この事実をリークするよう、仕向けたのではないだろうか。

ここまではワシントン・ポストの情報で想像がつく。

韓国が仲介し、韓国がリーク?

問題は、その「極秘の接触」を誰がアメリカ側に知らせたかだ。

この謎を解き明かしたのが、夕刊フジ「風雲永田町」(5903回)の鈴木棟一氏だ。鈴木氏はおおむね以下のように解説している。

1.そもそも日朝の極秘接触を仲介したのは韓国のCIA(中央情報局)に相当する国家情報院ではないか。

2.したがって、アメリカがこの極秘情報を入手したのも、韓国からではないか。

3.なぜなら、日本の内閣情報調査室(内調)と韓国の国家情報院は関係が深い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米5月住宅建設業者指数45に低下、1月以来の低水準

ビジネス

米企業在庫、3月は0.1%減 市場予想に一致

ワールド

シンガポール、20年ぶりに新首相就任 

ワールド

米、ウクライナに20億ドルの追加軍事支援 防衛事業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中