最新記事

消費社会

中国カフェ戦争、スタバに挑む急成長の配達重視「中華珈琲」チェーン

2018年8月1日(水)16時00分

北京のラッキンコーヒー店舗の内部。17日撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

銭治亜氏は、米コーヒーチェーン大手スターバックス(スタバ) の最大の悪夢となるのかもしれない。

42歳のこの起業家は、自分が最高経営責任者(CEO)を務める新興コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」が、いずれ中国国内でスタバより多くの店舗を持つようになると宣言。その目標達成に向け、シンガポール政府投資公社(GIC)などの投資家から融資を取り付けた。

ラッキンは1月に正式に開業したばかりだが、すでに中国13都市に660店舗以上を構えている。安価な配達料金と、オンライン注文、大幅な割引や従業員への奨励金が、強気な成長計画を支えている。

中国に米国に次ぐ規模の3400店舗を構え、2022年までにそれを倍近くに増やす計画を掲げるスタバは、重要な時期にラッキンの攻勢を受けることになる。

またその攻勢の速さは、市場をひっくり返そうとするスタートアップに脅かされかねないという、中国国内に定着した他の消費者ブランドに対する警告にもなっていると、ブランドコンサルタントは言う。

スタバの株価は6月、前四半期の中国既存店売上高の伸びがゼロかそれ以下になったと同社が公表したことを受けて急落した。前年は、7%の増加だった。

スタバは、一部地域で近隣に新しくできたカフェに顧客の一部が流れたことや、配達会社を通じた注文の大幅減があったとしている。

スタバ側は競争の激化には言及しなかったが、投資家やアナリストは、ラッキンが脅威となっているのは明白だと話す。

その一方で、スタバはこれまでも世界各地でライバルの挑戦を受けてきたが、店舗の雰囲気やサービス、安定したコーヒーの品質を武器に、非常にたくましい回復力を見せてきているとも彼らは指摘する。

また、トランプ米政権が中国からの輸入製品に懲罰関税を課したことに抗議して、中国消費者が米国ブランドを避け始めたという兆候もない。

大幅な割引

ロイター記者は、スタバやラッキン、コスタ・コーヒーなどの店舗が入る商業施設、北京銀泰センターで、消費者30人に話を聞いた。その半数が、ラッキンでコーヒーを買ったことがあるとし、大半が良かったと答えた。ただ3分の2以上が、今でもスタバを第1に選ぶと話した。

取材に応じた人の大半が、コーヒーは店内または持ち帰り用に購入したと話し、配達してもらったと答えた人はわずかだった。配達に重点を置いたラッキンの戦略は、今後問題に直面するかもしれない。また、店を選ぶ際に重視するのは味と利便性、そして店の環境との回答が多く、価格重視との回答を上回った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(14日配信記事・発表者側の申し出)シャープ、

ビジネス

中東欧・中東などの成長予想引き下げ、欧州開銀「2つ

ビジネス

英バーバリー、通年で34%減益 第4四半期の中国売

ビジネス

ABNアムロ、第1四半期は予想上回る29%増益 高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中