最新記事

インドネシア

あの男が帰ってくる ! ポルノ法違反の過激なイスラム急進派代表が逃亡先から

2018年6月20日(水)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

政治の季節に入るインドネシアで、次期大統領選候補と目されるイスラム教急進派代表の動きに注目が集まっている Beawiharta Beawiharta-REUTERS

<サウジでの「逃亡生活」をしているイスラム急進派の代表が近く帰国するという。来年の大統領選に向けインドネシアに政治の季節がやってくる>

インドネシア国家警察は6月16日、イスラム教急進派組織「イスラム擁護戦線(FPI)」のハビブ・リジック・シハブ代表に対する「ポルノ規制法違反」容疑での捜査について「証拠不十分」として捜査を打ち切ることを明らかにした。これにより警察の捜査を逃れるため2017年の5月以降サウジアラビアで「逃亡生活」を続けていたシハブ代表が近く帰国する可能性が出てきた。

なぜこの時期に、そしてなぜ捜査打ち切りなのか警察は一切詳しい経緯を発表していない。このために捜査中止を巡ってあらゆる憶測が飛び交い、過激なデモや集会、そして問題発言で社会不安を煽ってきた人物の帰国に一般のインドネシア人からは「なぜ」という疑問と同時に「あの男が帰ればまた何かが起きる」との不安が広がっている。一体インドネシアに何が起きているのか?

ポルノ法違反容疑者になるも海外逃亡

シハブ代表は急進派イスラム教指導者として一部の狂信的な信徒の間で尊敬と人気を集めていた。その影響力を背景に2016年9月ジャカルタ特別州のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)知事が行った発言をとらえて「イスラム教を冒涜した」と攻撃を開始。反アホック集会、デモを組織して「知事即時辞任」「知事即時逮捕」を訴え、デモの一部が暴徒化、警察部隊と衝突する事態も起きた。

インドネシアの人口の約88%を占めるイスラム教徒に対し、アホック知事は中華系インドネシア人で仏教徒だったことも作用し、アホック知事は「宗教冒涜罪」で有罪判決を受け、知事も辞職に追い込まれた。

このほかにキリスト教徒を冒涜した発言や独立の父スカルノ初代大統領や国家原則「パンチャシラ」への侮辱発言などで「死者侮辱、国家シンボル侮辱罪」の容疑者にも指定されている。それでも一向に反省せず調子に乗りすぎたシハブ代表に治安当局は2017年5月19日、「ポルノ規制法」違反の容疑者として警察への出頭を求めた。親しい女性知人との間でチャットアプリを通してわいせつな会話をしていたこと、その会話がネットに流失したことがポルノ法違反に当たると判断したのだ。イスラム聖職者にとってこの「ポルノ規正法違反」は最も恥ずかしいものであった。

このためシハブ容疑者は容疑を否定しながらも国外に脱出、サウジアラビアで悠々自適の「逃亡生活」を送っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中