最新記事

監視社会

iPhoneの個人情報を数秒でスキャン 中国企業、当局向け監視機器開発にしのぎ

2018年6月6日(水)14時31分
ロイター 

国際警察装備品展示会に展示された武器。北京で5月撮影(2018年 ロイター/Pei Li)

この機械を使えば、あなたのスマートフォンのパスワードをものの数秒で破ることができる。通話やメッセージアプリから個人情報を読み取り、あなたの連絡先リストを調べることも可能だ──。

中国製スキャナー「XDH-CF-5600」は、北京での国際警察装備品展示会に展示されていた数百もの監視機器の1つだ。機能を説明してくれたセールス担当者は、この機器を「携帯電話捜査官」と呼んだ。

同展示会は、中国の警察当局が、最新の監視機器をワンストップでそろえることができる場だ。こうした先端機器は、「黒科技(ブラック・テクノロジ―)」と広く呼ばれている。

中国治安当局が、いかにテクノロジーを駆使して共産党支配に反抗的な行動を監視し、取り締まっているかをこの展示会は物語っている。

オンライン、オフライン両面でのこの種の監視活動について、人権擁護団体は、言論を封じ込める国家的監視システムの発展につながると懸念を表明している。展示会を主催した中国公安部は、コメントの要請に応じなかった。

この展示会では、犯罪者を見分ける人工知能(AI)を搭載した可愛い外見のロボットのほか、たくさんのドローン、スマート眼鏡、DNAデータベースのソフトや、顔認識カメラなどが陳列されていた。

毎年開催される同展示会では、バイヤーのほとんどが中国の地方警察関係者のようだった。一方で、車両や航空機を出品していたグローバル企業もいた。米自動車大手フォード・モーターや、独自動車大手ダイムラー傘下のメルセデスベンツ、欧州航空機大手エアバスが、自動車やヘリコプター模型を展示していた。

各社は現段階で、コメントの求めに応じていない。西側企業が海外の警察当局に車両等を販売するのは珍しいことではない。

セキュリティ機器開発の廈門市美業柏科信息<300188.SZ>が開発したXDH-CF-5600スキャナーも含め、展示品がうたっていた機能を実際に確認することはできなかった。

XDH-CF-5600のようなスキャナーは、米国を含めた世界市場で存在する。だがその使用を巡っては、特に携帯電話機器から強制的にデータを収集することについて、議論を呼んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏、円滑化協定締結に向けた協議開始で合意 パリで

ワールド

NATO、加盟国へのロシアのハイブリッド攻撃を「深

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比1.6%増 予想と一

ワールド

暴力的な抗議は容認されず、バイデン氏 米大学の反戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中