最新記事

森友学園

ファーストレディーに挑戦した安倍昭恵 リスク恐れぬ行動で「渦中の人」に

2018年3月26日(月)19時25分


矛盾する思想

こうした革新的な言動から昭恵氏は「家庭内野党」とも呼ばれ、安倍晋三首相のタカ派的なイメージをやわらげるのに一役かってきた。

他方、夫である安倍首相の保守的な政治的スタンスと同じような姿勢を取ることも多い。

中国と韓国が過去の日本の軍国主義の象徴とみなす靖国神社に参拝したこともある。安倍首相は2013年12月に一度靖国に参拝したが、それ以来、行っていない。

森友学園をめぐる問題が明らかになる前、昭恵氏は森友学園が開校しようとしていた小学校の名誉校長を務めていた。また、教育勅語をカリキュラムに取り入れた同じ経営者の幼稚園も訪問している。

昭恵氏を知る人は、こうした彼女の一見矛盾する思想に基づく言動は驚くにあたらない、という。豊永氏は「彼女は理論で行動するのではなく、好きかきらいか、という感覚で行動する」との見方を示した。

今月になって森友問題が再燃してから、昭恵氏はこの問題に直接コメントはしていないが、福祉をテーマにしたイベントに出席し、難病を抱える男性との対談の中で「私も過去を後悔したり、反省したりするが、後悔したり、先に起こることを心配したり、恐れたりするのではなく、日々の瞬間を大切にしたい」と語ったことがメディアで取り上げられた。

こうした言動は、自分が置かれている状況を理解していないのではないか、との批判を招いている。

森友学園の土地取引に関わった近畿財務局職員が自殺した可能性で、当局が捜査中と報道された3月9日夜、昭恵氏は芸能人の主催するパーティーに出席していたと一部で報じられた。昭恵氏の写真がこの芸能人のインスタグラムにアップされたが、その後削除されているという。

同じ日にまた、昭恵氏は国際女性デーのアートイベントに出席し、笑顔の自身の写真をフェイスブックにアップした。これに対し一般の人から「能天気」との書き込みや、「人殺し」とまで表現した書き込みが見られた。一方、彼女を支持するメッセージも多くあった。

スポットライトのあたる場所は少し避けたほうがいいのでは、と昭恵氏に助言する人もいる。

保守的なメディアとされる産経新聞の田北真樹子記者は20日付のコラムで「昭恵氏は多くの人が認める魅力的な女性である。従来の『首相夫人』の枠にはまらない自由な生き方は多くを魅了する」と書いた。

「しかし、いま、政権は窮地に立たされている。昭恵氏の不用意な言動は政府与党内だけでなく安倍首相を支持する層にも疑問符を広げ、政権の脚を引っ張りつつある」と指摘し、最後にこう締めくくった。

「首相夫人に対して大変僭越(せんえつ)ながら、ここは行動を自粛なさってはいかがだろうか」。

(リンダ・シーグ 翻訳:宮崎亜巳)

[東京 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中