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「慰安婦」の記憶

慰安婦像が世界各地に増え続けるのはなぜか

2018年3月20日(火)11時20分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

――アメリカにも慰安婦像が建った今、この国も慰安婦論争の現場になっているように見えるが、慰安婦というのは既にアメリカ人の間で共通の記憶になっているのか。もしそうだとしたら、その物語はどんな筋書きか。

共通の記憶というのは確立された何かがあるのではなく、時間とともに作られ、変化し得る「プロセス」のことを言う。共通の記憶の形成には、公での論争が影響する場合が多いだろう。例えば、ホロコーストや南京虐殺を否定することは、そのたびに人々の意識に残虐行為のイメージを刷り込むという逆の効果を生んできた。

アメリカにおける慰安婦像をめぐる論争は、似たような現象を招いている。日本政府が慰安婦像に抗議すればするほど慰安婦像が建った地域のアメリカ人が慰安婦について知り、地域のニュースが全米的に報じられれば報じられるほど、慰安婦を支援する活動家だけでなく一般のアメリカ人もこの問題を知るようになる。

アメリカだけでなく、慰安婦というのは今や国境を超えて過去における戦争の記憶の一部になり、将来に向けては人権や女性の権利擁護という視点からも語られるようになった。慰安婦像があろうがなかろうが、グローバルな戦争の記憶から消えることはないであろう。


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 ニューズウィーク日本版2018年3月20日号
「コロンビア大学特別講義 第2回 戦争の記憶」
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 ニューズウィーク日本版2018年3月27日号
「コロンビア大学特別講義 第3回 『慰安婦』の記憶」
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 ※本記事はこの特集号からの転載です。

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