最新記事

AI

AIデータ検索が見つける難病治療薬

2018年3月14日(水)17時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジー・コラム二スト)

新薬開発のデジタル化でアルツハイマー病のような難病の治療法も突き止められるかも ILLUSTRATION BY CHRISTIAN LAGEREK-SCIENCE PHOTO/GETTY IMAGES

<AIを駆使して新薬開発の時間とコストを大幅に削減することを目指す動きが始まった。新世代の製薬企業は私たちの暮らしを変えるのか>

バージ・ゲノミクスの共同創業者、アリス・チャンは、私たちが日々使っているネット検索と同じテクノロジーを使って、アルツハイマー病の治療薬を見つけられると期待している。

そうなれば、これまでの新薬開発のやり方が時代遅れになるだろう。製薬大手が送り出す新薬の大半は、ラボ実験と臨床試験に10~15年の期間と、多ければ20億ドルもの資金を費やしている。バージは、こうした新薬開発のプロセスをデジタル化する道筋をつくりつつあるのかもしれない。

デジタル化がほかの分野でどのような影響を生んできたかは、誰もが知っている。そう、コストが大幅に下がり、供給が大幅に増えるのだ。昔の音楽愛好家は12ドル払ってレコードを買っていたが、今は音楽配信サービスを利用してほぼ無料で音楽を聴ける。同じようなことが医薬品の世界にも起きるのかもしれない。

チャンは、博士課程を中退した28歳の女性経営者。人工知能(AI)を活用して、まだ治療法が確立されていない神経系の病気の治療を実現させたいと意気込んでいる。

新薬開発のペースの遅さにいら立ちを募らせ始めたのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の博士課程で神経科学を研究していたときのこと。チャンいわく、製薬研究者はたいてい、1度に1種類の遺伝子を調べて、アルツハイマー病やパーキンソン病などの病気の発症を止めるカギを見つけようとする。しかし、この種の病気は一般的に、さまざまな遺伝子の複雑なネットワークの中での相互作用を通じて発症する。

チャンは博士論文の研究で、そのようなネットワークを見つけるためのソフトウエアを開発した。その際にヒントを得たのが、グーグル検索の土台を成すアルゴリズムだった。

遺伝子検査の普及が開いた扉

まず、けがをした後に神経の再生を助けるネットワークを明らかにすることを目指した。すると、脚の骨を砕かれたマウスが脚の機能を取り戻すのを助ける物質が見つかった。その物質を与えられたマウスは、自然な回復のプロセスより4倍速く回復したのだ。

「ほかの研究者たちが何千種類もの物質を試しても、成果は上がらなかった」と、チャンは言う。それに対し、彼女のソフトウエアは直ちに有効な物質を発見できた。

MAGAZINE

特集:間違いだらけのAI論

2018-12・18号(12/11発売)

AI信奉者が陥る「ソロー・パラドックスの罠」── 過大評価と盲信で見失う人工知能の未来とチャンス

人気ランキング

  • 1

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 2

    【動画】ロシアの「最先端ロボット」には......実は人が入っていた

  • 3

    宇宙からのメッセージ!? 11光年先の惑星から謎の信号

  • 4

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 5

    華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?──中国ハイテク…

  • 6

    JKビジネスを天国と呼ぶ「売春」女子高生たちの生の声

  • 7

    「ディズニーパークに遺灰がまかれている」という都…

  • 8

    心肺停止後、5分は意識がある!? 最新の脳神経学で…

  • 9

    フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実…

  • 10

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 1

    生きるために自分の足を噛みちぎった犬ルークの強さ

  • 2

    世界最小チワワ、韓国で49回クローンされ、世界で最も複製された犬に

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

  • 5

    フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実…

  • 6

    韓国で隣家のコーギー犬を飼い主に食べさせようとし…

  • 7

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 8

    8メートルの巨大ニシキヘビ、漁師を締め上げ インド…

  • 9

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 10

    ファーウェイ副会長逮捕の報復で、中国がアメリカ人…

  • 1

    生きるために自分の足を噛みちぎった犬ルークの強さ

  • 2

    「人肉を食べ飽きた」呪術師らの公判で明らかになったおぞましい新事実

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 5

    恋人を殺して食べたロシア人の男、詩で無罪を訴え

  • 6

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 7

    フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実…

  • 8

    カルロス・ゴーン逮捕、アメリカでどう報じられたか

  • 9

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 10

    世界最小チワワ、韓国で49回クローンされ、世界で最…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

ニューズウィーク日本版特別編集 レゴのすべて

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月