最新記事

セクハラは#MeTooで滅ぶのか

女性に自慰を見せつける男性心理をセックスセラピストに聞く

2017年12月2日(土)10時20分
アンジェリーナ・チャーピン

RUSSELL COBB-IKON IMAGES/GETTY IMAGES


171205cover_150.jpg<ニューズウィーク日本版2017年12月5日号は「セクハラは#MeTooで滅ぶのか」特集。「#MeToo」を合言葉にしたセクハラ告発が世界に拡大中だが、なぜ男性は女性に対する性的虐待を止められないのか。「告発」最新事情や各国への広がり、男性心理も分析したこの特集より>

ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーンのセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)問題は、各界の大物を次々と巻き込む一大スキャンダルに発展した。被害女性による告発の波は、ケビン・スペイシーやダスティン・ホフマンといった名優にも飛び火。政界でも現職上院議員やジョージ・ブッシュ元大統領がやり玉に挙げられた。

なかでも最も嫌な気分にさせられたワインスティーンのセクハラの1つは、女性に自慰を見せつける行為だ。TVジャーナリストのローレン・シバンの告発によると、ワインスティーンはレストランで彼女にキスを迫って拒否されると、「立って見てろ」と言って自慰を始め、近くの鉢植えに精液をぶちまけた。

もちろん、この種の性的倒錯はハリウッドだけの話ではない。地下鉄の車内や市街地の路上では毎日、女性の目の前で性器を露出する男たちが現れる。

なぜ男性はこうした行動に出るのか。ロサンゼルスの「健全なセックス・センター」で臨床ディレクターを務めるセックスセラピストのアレクサンドラ・ケイトハキスにジャーナリストのアンジェリーナ・チャーピンが話を聞いた。

――自慰の見せつけは、身体的接触や言葉を伴わない性的暴力の1つ。この行為はなぜ、性的な捕食者(プレデター)に好まれるのか?

強い露出癖を持つ人間は、意図的に被害者にショックを与えようとする。理由は、怒っているから。この行為は女性に対する復讐だ。この種の男性は、女性が最も脅威に感じる体の部位を見せつけることで、「性的敵意」または「性的怒り」を獲物にぶつけている。

彼らの強い怒りの原因は幼少期の性的虐待にある。例えば、母親から感情的な虐待を受けていたり、母親が虐待癖のある父親から守ってくれなかったり。一部の男性は成長すると、性的行動を通じて怒りを女性にぶつけるようになる。彼らはそれ以外に感情の処理方法を知らない。

――女性を物理的に暴行せずに目の前で自慰をする理由は?

彼らは自分をレイプ魔と思いたくない、あるいはそのように見られたくないのかもしれない。自慰行為をするだけなら、誰も暴行していないと自分に言い聞かせることができる。

――背後にある心理的動機は?

自分の力を実感できること。彼らは獲物を追い詰めることで、ある種の満足感を得ている。この行為の背後には、極めて原始的で子供じみた本能的衝動もある。「僕を見て」と叫ぶのとほとんど同じだ。

奇妙に聞こえるかもしれないが、「自分は求められている」と感じている可能性もある。「この女は目の前にいて、こっちを見てるんだから、俺が欲しいんだ」と感じているのかもしれない。同時に、その女性が怯え、恥辱を感じているという事実が、彼らに自分の力を実感させ、性的興奮を刺激する。

【参考記事】セクハラ告発#MeTooは日本にも広がるか
【参考記事】セクハラ・性暴力に「俺は無関係」と言えない理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中