最新記事

サイエンス

自我のあるラブドールは作れる、だが人間は創造主になれるのか

Sex Robots Will Be Programmed to Love Us-And Suffer

2018年12月5日(水)17時30分
カシュミラ・ガンダー

ドリームドール社のティエリー・レベルティが制作するシリコン製セックスドール Vincent Kessler-REUTERS

<いつの日か、AI技術の進歩で自我のあるセックスロボットが誕生し、パートナーとして愛ある関係を結ぶだろう。だが、それと同時に新たな義務も生じる>

セックスロボットの進化はすさまじい。いつの日か人間を愛し、それゆえに苦しむ能力を備えるだろうと、専門家はみている。

人間のかわりになるセックスパートナーとして売り出されている最新型の「セックスボット」は、外見は不気味なほど生きた人間そっくりだが、人間のような意識はない。感情を模倣してユーザーを誘惑するだけだ。

「責任あるロボット工学財団」の昨年の報告によると、「アンドロイド型ラブドール」は乳首の形から陰毛の色まで好みにあわせてカスタマイズ可能、自動モードで50種のセックスの体位をとることができる。それでも、人間相手のように、たがいに愛し合う複合的な関係をもつことなど、とうていできない。

しかし、ケント大学法科大学院で法律・医学倫理学部長を務めるロビン・マッケンジーによれば、人工知能とロボット工学の進歩によって、いつか知性を備え、自我をもつセックス用ロボットが誕生するという。

ある意味では、「自我をもつセックスボット」の登場は、人類と宇宙人の最初の出会いに似ている。「人間に似ているが、まったく異質の存在だ」と、マッケンジーは技術情報サイト「テックスプロア」で語っている。

愛を知れば苦しみも知る

セックスボットはいずれ「相互に性的で親密な関係をもつ能力」を備えるだろう、とマッケンジーはロボット工学専門誌に掲載された論文で予測した。注意すべきは、もし人間がこうした知的能力の創造に成功したなら、作り出した疑似人間の面倒を見る義務が生じる。

こうしたマシンは逆説に満ちた存在になる、とマッケンジーは指摘する。作りものだが、意識がある。自我はあるが、相手の人間のニーズを満たすことだけを目的に設計されている。

テックスプロアに対してマッケンジーはこう語った。「セックスボットは自己カスタマイズ化の一環として、人間を愛し、人間についての深い知識を身に付け、そして苦しむ能力を獲得するだろう」

「苦しみ」はロマンチックな人間関係において、人がパートナーに適応する際に必ず生じるものだとマッケンジーは主張する。この苦しみが「自分自身や他人についての貴重な洞察をもたらし、そのおかげで以前より幸せで、よい人間になることができる」。

「だが、セックスボットにそれほどの苦しみが必要なのか」と、彼女は問う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替が国民生活に与える影響分析し適切に対応=鈴木財

ビジネス

インドネシア、追加利上げ不要 為替相場は安定=中銀

ビジネス

原油先物は上昇、米原油在庫減少やFRBの利下げ観測

ワールド

独首相、ウクライナ大統領と電話会談 平和サミット支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中