最新記事

自動車

コロナ禍で自動車にもネット販売の波 日産は主力市場の米中で本腰

2020年11月9日(月)11時07分

直観に頼らないマーケティング

しかし、オンライン販売へのシフトは、慣れ親しんできた店舗販売戦略からの大きな転換であり、自動車業界にとって困難を伴う。ときに政治力を持ち、メーカーと深い関係を築いてきたフランチャイズのディーラーから強い反発を受けかねない。

新型コロナの感染拡大前から販売が落ち込み、苦戦していた日産にとっては、とりわけ大きな賭けとなる。日産はカルロス・ゴーン前会長の積極的な拡大路線で悪化した財務の立て直しを急ぎ、新車のラインアップが不足している。

関係者2人によると、日産経営陣は収益性の観点から販売のデジタル化を効果的だとみている。輸送費やマーケティング費など販売関連コストの無駄を削ぐとともに、データ収集力を向上できると考えている。

たとえば、今年夏に立ち上げた電気自動車「アリア」の特設ページ。世界で来年発売予定のこのスポーツ・ユーティリティ車(SUV)のウェブサイトには、開始から4日間で120万人が訪れた。関係者によると、訪問者が残した情報から、ラウンジのような室内空間とネットワーク接続サービスが、この車の最も人気の高い特徴であることが分かった。欧州で人気のボディカラーが、「暁(あかつき)」と日産が呼ぶ銅色と黒色のツートンであることも分かった。

また、欧州では56%が四輪駆動を、18%が二輪駆動を好み、残りはいずれも選択しない、あるいは回答をしなかった。米国では好みがほぼ拮抗した。

各地域の需要に合わせて部品やシステムをより正確に発注することができるようになったと、この関係者は説明する。「われわれのマーケティングは、直感に左右されにくくなっている」と、別の関係者は言う。「データに基づき、より正確なものになりつつある」。

最後の価格交渉で店舗へ

米デトロイトのコンサルティング会社アーバン・サイエンスで中国市場を担当するチーキャン・リム氏は、伝統的な自動車メーカーはオンライン販売で電気自動車メーカーに後れを取っていると指摘する。先頭を走るのは米テスラのほか、NIOやXpeng、WMといった中国勢だという。

伝統的なプレーヤーの中では日産、トヨタ自動車<7203.T>、ドイツのフォルクスワーゲンといった量産メーカーが中国で最も進んでおり、ネット販売の強化に向け具体的に取り組んでいると、リム氏は話す。「たとえばフォルクスワーゲンは、ディーラーに動画をライブ配信するやり方を教え、試乗しながら映像を流すこともある」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中