最新記事

EV

中国EVスタートアップ、コロナショックから活気取り戻す 好調なテスラが刺激

2020年9月30日(水)19時06分

中国で電気自動車(EV)を手掛けるスタートアップ企業が、活気を取り戻している。写真は22日、上海の愛馳汽車ショールームに展示された電気自動車(2020年 ロイター/Aly Song)

中国で電気自動車(EV)を手掛けるスタートアップ企業が、活気を取り戻している。原動力は米EV・大手テスラの好調ぶりだ。

中国では、テスラ車の滑らかなデザインと最先端技術への人気が高まっている。これに触発される形で、中国版テスラを夢見るスタートアップ企業の「第2陣」が今、資金調達や生産拡大、販売促進の動きを活発化させている。

中国におけるEVスタートアップの上海蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng)、理想汽車(Li Auto)、威馬(WMモーター)の4社は今年、合計80億ドル以上の資金を調達した。

4社のライバル、愛馳汽車(Aiways)は新規株式公開(IPO)を計画している。26日開幕の北京モーターショーを前に、フー・シャン社長がロイターに語った。

フー氏の上場意欲に火を付けたのは、小鵬汽車と理想汽車による米国でのIPOがひとまず成功を収めたことだ。

上海で2017年に創業した愛馳汽車が、これまで調達したのは「100億元にとどまって」おり、プライベートエクイティ企業やその他の投資家から、もっと資金を確保する必要があるとフー氏は言う。

「IPOも計画に入っており、進めていく考えだ」とし、中国国内で上場する可能性が高いとも述べた。

中国のEV市場は、政府の「新エネルギー車(NEV)」購入補助制度に後押しされ、世界最速の急成長を遂げてきた。しかし、昨年は補助金の削減が始まり、その他のEV促進政策も骨抜きになったことで、EV販売ブームは失速した。

これにより、拜騰汽車(バイトン)や奇点汽車(Singulato)といったEVスタートアップは不振に陥り、上海蔚来汽車の先行きにも暗雲が漂った。

だが、テスラの株式時価総額が膨れ上がり、中国での販売が急増したことは、同国の「EVドリーム」の終わりにはまだ、ほど遠いことを示している。

中国の自動車専門家、マイク・ダン氏は「EVスタートアップの命運は、テスラ株の行方とともにある。春には川のごとく資金流入が復活した。テスラがけん引役となり、思ったより早く、各社が将来に向けて動きだしそうだ」と話した。

玄関を出たところ

LMCオートモティブによると、テスラの中国販売台数は今年1―8月、コロナ禍にもかかわらず前年同期に比べ3倍近くに増えて7万3658台となった。

一部の中国自動車メーカー幹部は、中国におけるテスラ車の位置付けをアップルの初代スマートフォン「iPhone(アイフォーン)1」に例える。まだ、非常に多くの技術進歩が起こりそうで、中国メーカーに希望をもたらしているという。

愛馳汽車のフー社長によると、中国でEV人気が復活した一因は、多くの新モデル車が搭載し始めたインテリジェントドライブ機能(運転支援機能)や、インターネットに接続するコネクテッドカー技術の魅力にある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中