最新記事

新しい生活様式

新型コロナが問うオフィスの存在意義 NYの象徴エンパイアステートビルにも変化の波

2020年7月6日(月)12時54分

エンパイアステートビルのエレベーター内。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つよう、足元にステッカーが貼られている。6月24日、ニューヨーク市マンハッタンで撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

マンハッタンにそびえるエンパイアステートビルは、約90年にわたり米国の経済力の象徴だった。だが最近では、新型コロナウイルスとの困難な戦いの象徴になっている。

高さ443メートル、102階建てのアールデコ調のこの高層建築は、新型コロナウイルスの流行が深刻な状況に陥る中で、今はほとんど無人の状態だ。医療従事者など「エッセンシャル・ワーカー」に敬意を表するため、救急車の警告灯の象徴である赤と白のライトが点滅している。

都市封鎖(ロックダウン)が解除され、ニューヨーク市が経済再開の第2フェーズに入って1週間。エンパイアステートビルにオフィスを構える数十社の企業は、業務再開の時期、そもそも再開の是非を見極めようとしている。

これはニューヨークだけの現象ではない。いまや全米、全世界で見られる。大規模なオフィス空間で働くという、あまりにも当たり前のことが、突然想像できなくなってしまったのだ。

6月22日からの経済活動再開に伴い、人口密度を以前の50%以下に抑えるという条件で、人々はオフィスに戻れるようになった。しかし、ビジネス交流サイトのリンクトイン、高級時計ブランドのブローバ、非営利団体のワールド・モニュメント財団など、エンパイアステートビルに入居する企業のほとんどは、在宅勤務を延長することを選択している。

エンパイアステートビルの運営会社は、テナントにアンケートを実施。このビルで働く1万5000人のうち、経済再開の第2フェーズで戻ってくるのは15━20%に留まると予測している。

だが、テナント企業の関係者に話を聞いたところ、今後も入居は続けるものの、コロナ前と同じ職場環境に戻ると想定している人はほとんどいないことが分かった。

2011年、「カルバン・クライン」などのライセンス管理を行っているグローバル・ブランズ・グループは6フロア分のスペースを15年間契約で借りた。だが、同社はニューヨークで勤務する従業員に対し、オフィスへの復帰を義務づけることはないと伝えている。

リック・ダーリングCEOは、「素晴らしい本社ビル」で働くことの魅力がパンデミックによって霞んでしまったと話す。「それはあまり重要ではなくなったと思う」とした上で、「まさに業績こそが企業の評判を決定することになる」と語る。

同CEOは現在のオフィスについて何の決定も下していないとする一方、ファッション関係の発表に使うショールームは必要になるだろうと話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中