最新記事

メディア

転換期を迎えるラジオ 広告収入低迷にコスト増の民放、地域密着で活路

2019年3月28日(木)06時00分

コミュニティFMとの連携

そうした中、既存のAMラジオ局で新たな取り組みも始まった。HBC北海道放送と北海道のコミュニティFM23社が加盟する日本コミュニティ放送協会北海道地区協議会は2018年9月1日、「放送事業等に関する連携協定」を締結した。

地域情報・気象情報の相互共有や災害時の相互協力、パーソナリティの相互出演などの連携を図っていく。

この連携を受け、HBCラジオは昨年10月から、帯番組の中で週1回、連携先のコミュニティFMが発信する情報を伝えるコーナーをスタート。4月からは連携をさらに拡大する。

HBC北海道放送ラジオ局編成業務部の角田拡樹部長は「これまで地域の情報を細かく伝えることができなかったが、一緒にやることで補完できる」と説明した。

行政や観光、交通情報など地域情報を提供する地域密着型メディアであるコミュニティFMと道内全域をカバーするHBCラジオの提携は、ネット時代における新しいビジネスモデルの模索とも言える。

大正大学の北郷教授は「ラジオは本来、コミュニティーメディアだ」と指摘、連携強化は県域ラジオが進むべき方向の1つとの見方を示した。

TBSラジオの入江清彦会長は、27日の会議で「われわれが決して忘れてはいけないことは、民放ラジオは地域に根差し、地域住民の知る権利に応え、災害時には安全・安心のための災害放送に全力を挙げることだ」と強調した。

インターネット配信サービス「radiko(ラジコ)」の活用など、IT技術も活用しながら生き残りをかけているラジオ。

一方、音声市場全体をみると、ビジネスの専門家やミュージシャン、インフルエンサーなどの「声のブログ」を提供するベンチャー企業「Voicy」(東京都渋谷区)が急成長するなど、競争は厳しさを増す一方だ。

AM局がFM局へのシフトを志向するのも、高コストのAM設備維持費を低コストのFM設備に切り替えたいというのが本音だ。

ただ、三菱総合研究所の調査によると、ワイドFMに対応したラジオの普及率は現在53%にとどまっている。対応ラジオが増えなければ、収入の大半を占める広告費がさらに減少する可能性があり、「縮小均衡」の動きが一段と加速しかねない。

深夜放送で輝きを放っていた1960─70年代のAMラジオ。果たしてラジオ各社は、その勢いを取り戻すことができるのか──。
(志田義寧 編集:田巻一彦)

[東京 27日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中