コラム

コロナ禍で露呈した「意識低い系」日本人

2020年05月02日(土)11時15分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

日本人は総じて自分が社会の一員であるという自覚に疎いと感じられる ATHIT PERAWONGMETHA-REUTERS

<社会のための行動がひいては個人の幸福につながる──日本の国民や社会は感染予防に積極的に協力するものだと思っていたが>

日本で新型コロナウイルスの影響が出始めて随分たつ。近隣国に発生源の中国があるため、欧米よりもずっと早い1月末から懸念が報道されてきた。だが私はこれまで日本人のコロナ対応を見て、その危機感のなさと社会貢献意識の低さに少し啞然としている。

まず始まりは、企業のテレワーク推進と学校休校からだった。

感染を広げないために企業は社員に家で仕事をさせよう、休校のため家にいる子どもの世話をする保護者を支えよう、子どもをなるべく家に居させよう──。社会のための行動、それがひいては個人の幸福につながると思えれば、企業や社会は積極的に協力するはずだ。

だが残念ながらそうはならなかった。企業はテレワークを渋り、働く親は子どもを学童保育や保育園に預ける。テレワーク中の親も子どもが家にいるのは負担だと愚痴る......。

それが企業の本音であり、子を持つ親の本心であることは十分理解できる。だが今それを声高に言う時なのだろうか。感染爆発となれば社会活動は停止し、企業も個人も損害を被る。だったら本音と自分たちの都合はぐっとのみ込んで、テレワークを推進し休みを容認し、家で子の面倒を見るべきだろう。

そして3月末から感染拡大が本格化しても、通勤電車は混んだままだった。テレビも旅歩きとバラエティー番組であふれている。政府も都道府県のトップも外出自粛を促しているにもかかわらず、だ。スポンサー対応や番組編成の変更は大変だろう。しかしこういう時こそのテレビ放送ではないのか。自粛に次ぐ自粛で社会が必要以上に暗くなるのは良いことだと思わない。それでもテレビはあまりにお気楽な雰囲気にあふれている。

寄付や貢献をしようとしない企業、個人

加えて、マスクや防護服や人工呼吸器が足りなくなると叫ばれても、寄付しよう、医療機器を新たに生産して提供しよう、という企業や個人がとても少ないのはどうしてだろう。自宅や洋服・持ち物の値段をテレビやSNSで自慢する有名人がたくさんいるというのに、これが世界第3位の経済大国なのだろうか。私の生まれ育ったイランと対照的だ。

イランも近年次々と自然災害に襲われ、新型コロナウイルスでは大変な目に遭っている。だがテレビでは応援の番組が放送され、多くの有名人が競って高額を寄付している。これほどの厄災でなくても、貧困層などへの支援や、困ったときに親戚同士で食べ物・物資を融通し合うことは日常茶飯事である。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クアルコム、4─6月業績見通しが予想超え スマホ市

ビジネス

ドル一時153.00円まで下落、日本政府は介入の有

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story