最新記事

選挙

選挙報道、このままでいいのか?──踏み込んだ人物評がなくては選べない

2022年7月4日(月)08時05分
山本昭宏(神戸市外国語大学総合文化コース准教授)
選挙

tsuyoshi_kinjyo-iStock

<政治への関心がますます低下し、特に若者の無関心が指摘される。しかし、候補者の顔がよく見えない上に、そもそも選挙がおもしろくない理由のひとつは、報道そのものにある>

どうも日本の選挙は盛り上がりにかける......ながらく、そう言われてきた。

確かに欧米などと比べればそう言えるが、祝祭的な雰囲気が薄いだけで、一定以上の関心は集めてきたはずだ。しかしながら、近年はそうとも言えない状況にある。

前回2019年7月の参院選の投票率は48.8%。90年代の後半以降、参院選の投票率は50%台で推移していたが、それが50%を割り込んだ。今回2022年7月の参院選では投票率がどうなるかわからないが、10代から30代が選挙に関心を持たないという従来の傾向は変わらないだろう(*1)。

10代から30代の投票率が低い理由は、多岐に及ぶ。たとえば、労働者としての経験が浅く、家庭を持つ人も相対的に少ないという青年期の特徴が挙げられる。社会との関与が弱ければ、経済対策や社会保障制度が他人事にみえやすいからだ。その他、二大政党制の非定着、現実政治を忌避する教育なども理由として挙がる。

このように、青年期に限って言えば、選挙に関心を持ちにくい環境がある。関心がなければ、そもそも知ろうと思えない。わからない。面白くないのも当然である。国のあり方を決める大切な選挙だと言われても実感を持てないのだ。

では、選挙が面白くない原因はどこにあるのだろうか。これもまた原因は多岐に及ぶが、選挙報道の形骸化が大きいと思われる。

選挙報道を面白くするために

選挙報道を考えるにあたって、取り上げるべきは新聞記者や雑誌記者たちによるジャーナリズムだ。

なお、テレビについては特に注文はない。放送法を意識しすぎているのか、「中立・公正」に縛り付けられているように見えるからだ。特に選挙期間中はその傾向が強い。これからも投票日の夜の特番で、結果を報告するだけだろう。もちろんそれで十分なのである。

問題は、新聞や雑誌、そしてそれらのコンテンツのネット配信だろう。ここには、選挙報道を面白くするチャンスがある。

そう考える理由のひとつは、昨年10月31日の衆院選だ。報道各社の議席予測にバラつきがあり、選挙結果と大きくズレた。

近年は、各社の予想が一致しており、的中率も高く、投開票を待たずとも大勢を見通すことが可能だった。その議席予測が前回の衆院選で外れたのだ。理由は、事前分析の方法の変化にあるとも言われる(*2)。

各社の調査の精度が高いのは信頼性という観点から言って良いことだが、予想通りでは端的に言って面白くない。そう思えば、各社が調査と予測に苦慮している現状は、裏を返せば先の読めない選挙になりやすいということである。有権者の関心を高める要因となり得るだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中