最新記事

アフガン情勢

アフガニスタン、タリバン「報復しない」は偽り? 地方一家が恐怖を証言

2021年10月5日(火)10時25分

タリバン政権のムラー・モハマド・ヤクーブ国防相は前週、タリバンの勝利後に一部の戦闘員がとった行動を非難する声明を発表した。ただ具体的な事例には言及しなかった。

「不信心者と、悪名高い元兵士たち」がタリバン戦闘員に合流し、省庁や政府機関オフィスの占拠から2─3件報じられている殺人に至るまで、さまざまな罪を犯したというのが国防相の説明だ。

「誰もがアフガニスタン全土で布告された大赦の決定を知っている。誰かに復讐する権限を与えられた戦士はいない」

ソーシャルメディアで共有される報復

タリバンは1996年から2001年にかけて国内を支配し、独自の解釈によるイスラム法を厳格に執行した。公開の石打ちや身体の切断を行い、女性の労働や少女の就学は禁止された。

タリバンは、今回は国民の人権を尊重し敵の捜索はしないと表明しているが、身の安全と将来に不安を感じた何万もの人々が、混乱極まるカブール脱出を経て国外に出た。潜伏中の人はさらに多い。

ソーシャルメディアへの数百件の投稿では、携帯電話による画質の粗いものだが、武装した男たちによる家宅捜索、路上での人々に対する殴打、拘束して車に乗せるといった映像がシェアされている。

複数の元当局者、軍関係者、その他前政権に近い人々が、報復があったと主張している。ロイターではそうした主張の裏付けを得られていないが、ロイターのインタビューに応じた人の中には、恐怖のあまり自らの体験を公表できないという声もある。

オマル氏の一件は、これまでのところ、西側諸国の支援を受けた前政権で働いた人々、特にタリバンをアフガンから追放するために戦った人々に対するタリバンの報復を最も詳しく伝える証言の1つだ。

潜伏中

山がちなアフガニスタン東部に位置し、リンゴやレモンを育てる農地が点在する谷間にあるコディ・ケルという僻村は、以前からタリバンの標的になっていた、と住民らは語る。

住民らによれば、2001年に権力の座を追われた後、タリバンがパキスタンへと続く戦略上重要なルートの支配権を取り戻そうと試みる中で、この村と周囲のシェルザド地区はロケット弾による攻撃を受けたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中