最新記事
リトアニア

「台湾代表処」設置のリトアニアに 中国が逆上、「頭がおかしくてちっぽけで危うい国」と罵倒

'Crazy, Tiny Country': China Media Lashes Out at Lithuania Over Taiwan

2021年8月11日(水)18時07分
ジョン・フェン
バチカンにある中華民国大使館

欧州で唯一、台湾の正式名称「中華民国」を冠した大使館を置くバチカン Remo Casilli-REUTERS

<とくに「台湾」の名を冠した稀有な出先機関を認めたことで中国は猛反発。リトアニアはEUとともに毅然とした態度を保っているが>

中国政府の意見を代弁する国際ニュース紙、環球時報の編集長は8月10日、バルト三国のひとつ、リトアニアを激しく攻撃する記事を掲載した。リトアニアの首都ビリニュスに台湾が出先機関を設置することを認めた上、撤回を求めた中国政府の要求を拒絶したからだ。

環球時報の胡錫進(フー・シーチン)編集長は、外交に大きな影響を及ぼす恐れがあるにも関わらず、リトアニアが決定を覆さなかったことに驚きを表明した。

胡は、中国最大のソーシャルメディア新浪微博(ウェイボー)でリトアニア政府を激しく攻撃し、環球時報のウェブサイトに掲載した社説でも攻撃を繰り返した。

リトアニアのことを「頭のおかしな小さな国で、地政学的な危険に満ちている」と評し、リトアニア政府がアメリカの側につき、中国と敵対していると非難。さらに「ヨーロッパの反中国派のなかでも、最も踏み込んだ行動に出た」と書いた。

そして「リトアニアのような小国が、大国との関係を悪化させる行動をとるとは、度し難いことだ」とも付け加えた。

この記事がウェブサイトに掲載される数時間前、中国外務省はビリニュスに駐在する中国大使を本国に呼び戻すこと、そしてリトアニア政府に対しても駐中国大使の帰国を要求することを発表した。

中国は断固として反対

台湾はアメリカをはじめ正式な外交関係のない国々において、出先機関を設置しているが、通常は国を意味しない「台北」という曖昧な名称をつけている。ところが今回リトアニアは、新たに設置する出先機関に「台湾」の名称を使う計画を認めた。

中国外務省は声明で、「中国政府は、この動きに対して断固として反対する」と述べた。

これに対し、リトアニア外務省は「EUや世界の他の多くの国々と同様に、台湾とは相互に有益な関係を追求する決意だ」と反論。ガブリエラス・ ランズベルギス外相はロイターに、政府は「次の動き」を検討していると語った。

「中国のメッセージは受け取った。だがこちらからもメッセージを送った。すなわち、リトアニアは独自の政策を続ける、ということだ。これはわが国の政策というだけでなく、他の多くのヨーロッパ諸国の政策でもあるからだ」と、彼は述べた。

台湾はヨーロッパに23の出先機関があるが、そのうちの1つ、バチカン(教皇聖座)に設置された機関だけが、台湾の正式名称である「中華民国」の大使館となっている。

環球時報の胡は、リトアニアは「最終的には国際ルールを破るという邪悪な行為の代償を払う」と述べたが、彼の見解はEUでは共有されていないようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

みずほFGの今期純利益見通し10%増の7500億円

ビジネス

中国の複数行、高金利預金商品を廃止 コスト削減狙う

ワールド

インドネシア貿易黒字、4月は35.6億ドル 予想上

ビジネス

コメルツ銀、第1四半期は29%増益 通期の純金利収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中