新型コロナという「人類史上の厄災」を、どう未来に伝えるべきか
Archiving the Pandemic
特に参考にしたのが1918年に始まったスペイン風邪の大流行だ。患者が書いた手記や手紙は100年の時を超え、新型コロナ感染者への理解を深める一助となっている。
とはいえ歴史をリアルタイムで分類し、保存するのは簡単な作業ではない。この1年はとにかく波乱続きで、アーカイブの正式名称を決めることさえ「今はまだ難しい」と、シュワイアーは言う。
新型コロナ、BLM運動、大統領選は1つの大事件ではないとノットは指摘する。「人はこれらを一塊の出来事ではなく、時系列が異なる複数の出来事として経験する」
アーカイブは未来の研究者や学生が過去をのぞき見るための窓だが、資料を作って提供する今の人々にも有益だ。
「いま起きていることを理解したいという思いはとても切実だ」と、ノットは語る。「アーカイブという形で現状を記録する機会を提供すれば、頭の整理に役立ち、気持ちも落ち着くのではと考えた」
Zoomで聞き取り調査も
つらい記憶や物議を醸しそうな意見を提供する場合は、5年間は公開しないという条件を付けられる。シュワイアーによれば、50年間非公開の条件を付けた人もいるという。
もっとも人間は表に出す情報を自分で選択し、心に大きな傷を残した出来事はなかなか共有したがらないとイムはみている。「そうした体験がシェアされるのは、先の話だろう」
ほとんどのプロジェクトは写真や日記のデジタルデータを収集しているが、一部では聞き取り調査にも力を入れる。
ニューヨーク大学のアジアン/パシフィック/アメリカン研究所(A/P/A)による取り組みの「A/P/Aボイシス:COVID-19公共記憶プロジェクト」は、アジア・太平洋諸島系アメリカ人のコミュニティーに新型コロナが及ぼした影響を調査し、記録している。