最新記事

香港

「中国は香港の一世代をまるごと抹殺することも厭わない」

“China Is Wiping Out a Whole Generation of Hong Kongers”

2020年12月3日(木)18時35分
デービッド・ブレナン

罪状認否後、収監された民主活動家、黄之鋒(11月23日) Tyrone Siu-REUTERS

<「何千人もの若い活動家がこれからどんな目に遭うかを想像すると、胸が張り裂けそうだ」と、指名手配中で米在住の活動家、朱牧民は言う>

中国政府が香港の民主派への締め付けを強めるなか、抗議運動を扇動したとして著名な活動家3人に量刑が言い渡され、香港の民主派と国際的な人権団体が批判の声を上げている。

3人の活動家は24歳の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、23歳の周庭(アグネス・チョウ)、26歳の林郎彦(アイバン・ラム)。昨年6月に「逃亡犯条例」改正案に抗議して、警察本部の包囲を呼びかけた罪などに問われ、今年11月23日に有罪が確定。12月2日にそれぞれ13カ月半、10カ月、7カ月の量刑が言い渡された。

中国による政治的・法的な統制強化に抗議して昨年夏に香港で大規模なデモが起きて以降、民主派の活動家が執行猶予なしの禁固刑に処せられるのはこれが初めてだ。

3人とも裁判で罪を認めたとされている。量刑判決が下る前から裁判所前には100人程の支持者が結集。それより数は少ないものの中国寄りの一派も集まり、重い刑罰を科せと叫ぶなど、騒然とした雰囲気になっていた。

量刑判決を受けて、香港の民主派と国際的な人権団体はすぐさま非難声明を出した。中国共産党は、香港の民主派の合法的な政治活動をつぶし、1997年にイギリスから香港が返還された際の取り決めである「一国二制度」を踏みにじって、香港の高度な自治を奪おうとしている、今回の動きもその一環にほかならない、というのだ。

獄中での処遇を危惧

アメリカに拠点を置くNGO「香港民主委員会」の朱牧民(サミュエル・チュー)代表は本誌に宛てた声明で、「中国政府と香港の林鄭月蛾(キャリー・ラム)行政長官は、見せしめのために裁判を利用している」と指摘した。「『服従するか、さもなければ青春の一番楽しい時期を獄中で過ごすことになるぞ』というメッセージを出しているのだ」

さらに朱はこう続ける。「中国共産党は、(香港に対する)支配と権力の行使を維持するためには、香港の一世代をまるごと投獄し、抹殺することも厭わない。いや、むしろ進んでそうするだろう。この3人、そして何千人もの若い活動家がこれからどんな目に遭うかを想像すると、胸が張り裂けそうで、激しい怒りに駆られる」

香港駐留の人民解放軍部隊が公開した暴動鎮圧演習

朱は、量刑判決を受ける前から独房に入れられていた黄の獄中書簡を引用して、こうも述べた。「黄が今週、刑務所から書き送ってきたように、『魂を檻に閉じ込めることはできない』。活動家が逮捕され、有罪となり、収監されるたびに、運動はますます強固になる。香港民主委員会は厳しい量刑に強く抗議する。そしてアメリカと国際社会にも抗議の声を上げるよう働きかけていく」

黄、周と共に既に解散した民主派組織「香港衆志」を設立し、主席を務めていた羅冠聡(ネイサン・ロー)は本誌に今回の判決は「酷過ぎる」と語った。

羅は、今夏「香港国家安全維持法(国安法)」が施行された後、香港を出て、今はロンドンに滞在している。同法に基づけば、反政府的な動きは犯罪とみなされ、違反した場合は最高で終身刑に処せられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中