最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選、当日の「誤報リスク」 TV各局は当確の重圧

2020年10月19日(月)10時13分

法廷闘争になれば、まさに2000年のように、連邦最高裁が最終的な調停役になる可能性がある。ただ、そうした場合の最高裁の役割については既に論議が起きている。共和党は死去したリベラル派判事、ギンズバーグ氏の後釜を急いで据えようとしており、いま指名されている人物が就けば最高裁のバランスが右派に傾くことになるからだ。

こうした社会分断の状況で、各テレビ局は報道が偏向していないか、微に入り細に入り吟味されることになる。

コロンビア大学ジャーナリズム大学院のスティーブ・コール学長は「メディアも二極化が進んでいる。一部の局の視聴者は特に特定の主義主張に凝り固まる傾向もあるため、一方向に偏っていると見なされたり、他局とは違ったりする当確判定は、正確な選挙報道ではなく政治的な戦術のたぐいと受け止められる恐れがある」と説明する。

コール氏によると、今回の大統領選報道では州レベルでも郡レベルでも詳細な報道が求められる。こうした精度の必要性は2016年の大統領選挙で浮き彫りになった。一般投票の得票総数ではクリントン氏が勝利しながらも、選挙人獲得ではトランプ氏が上回ったが、ここでは少数の激戦州が結果を左右した。票差はときに極めて僅差になり、ミシガン州ではわずか約1万1000票差だった。

コール氏は、今年は特に接戦で無理やり判定を下すのは危険だと指摘する。得票差があまりに小さい場合、20州と首都ワシントンでは自動的に再集計になる。幾つかの州では選挙当夜、誰が勝利したかだけでなく、票差が再集計につながるかを見極めるのさえ難しいかもしれない。

分かっていないことを率直に示す提示し続ける

各局幹部はロイターに対し、何が分かっていて何が分かっていないかを率直に示すことが局にとって鍵になると強調した。

CNNの政治番組ディレクター、デービッド・チャリアン氏は「今年の不在者投票と郵便投票の劇的な増加を考えると、選挙当夜の開票状況について視聴者や読者に透明性を提示し続けることが一段と重要になる」と話した。

幹部らによると、当夜の選挙区からの報道だけでなく、期日前投票と郵便投票の比率予想も重視する方針。

選挙陣営が十分な証拠もなく勝利を宣言したり、テレビ局の予想に異議を唱えたりすれば、各局はそれも報道するという。当確は各局の「判定デスク」が担当し、出口調査や過去の選挙のデータ、どんどん入ってくる実際の開票結果の組み合わせに基づいて判定する。

CBSニュースのスーザン・ジリンスキー社長は「今夜はいろんなシナリオがあり得る」と視聴者にそれなりの心構えをしてもらうことも重要だと話す。「今度の選挙は全く予測不能だからだ」

(Helen Coster記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・強行退院したトランプが直面する「ウィズ・コロナ選挙戦」の難題
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ



20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪BHP、英アングロ買収案の引き上げ必要=JPモル

ワールド

サウジ皇太子が訪日を延期、国王の健康状態受け=林官

ビジネス

午前の国債先物は続落、長期金利は11年ぶり高水準の

ビジネス

中国、最優遇貸出金利据え置き 市場予想通り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中