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日本社会

日本女性のフルタイム就業率は過去30年で低下した

2020年10月8日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

働く女性は増えているのに、フルタイム就業率は下がっている。すなわち他の働き方が増えているのだが、フルタイムとパートの就業率を積み上げた棒グラフ<図2>にすると、それが明瞭になる。

data201008-chart02.jpg

自営を除く就業率だが、日本でも働く女性は増えている。だがフルタイムとパートで色分けすると、増えているのは後者で、前者は減っている。増分の多くはパートのようだ。

アメリカとスウェーデンでは、パートが減りフルタイムが増えている。スウェーデンでは32.8%から51.7%と大幅な増加だ。トータルの就業率が下がっているのは、成人学生が増えているためだろう。この国の成人女性の12.3%が学生で、これが生涯学習の先進国と言われるゆえんだ。

共働きが常識になった現代

一口に女性の社会進出と言ってもその様相は国によって違い、欧米はフルタイム増によるが日本はパート(非正規)依存であることが分かる。今世紀初頭に新自由主義のナタが振るわれたが、女性はそれを下支えする安い労働力として取り込まれている。働き方の量ではなく、質の向上が今後の課題と言える(山口一男・シカゴ大学教授)。

女性のトータルの就業率を見て「良し」とするのではなく、その中身を注視しなければならない。安い働き方しかできないならば、女性は結婚相手の男性に高い収入を求めざるを得ない。しかし今では若年男性の給与も下がっているので、そういう望みは叶いにくい。それならと、実家にパラサイトして理想の相手を待ち続ける――。社会全体の未婚化・少子化は、その集積に他ならない。

男性の腕一本で家族を養える時代など、とうに終わっている。二馬力で行けば、稼ぎ手を柔軟にチェンジすれば何とかなる。大事なのは、こういう展望を若者が持てるようにすることだ。保育所の増設は、その方策の中核となる。80年代では欧米も日本と近い状況で、変わったのはその後だ。「為せば成る」は実証されている。

<資料:『世界価値観調査』

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