最新記事

韓国

文在寅政権を支える3人の首長が起こした性的暴行事件、さらに在ニュージーランド韓国大使館でも

2020年9月9日(水)18時00分
佐々木和義

前市長は翌9日の昼前から行方がわからなくなり、家族が捜索願を届け出て、10日未明、遺体で発見された。左派系の朴元淳前市長も文在寅大統領の有力な後任候補と目されていた。

与党・共に民主党の支持者が、セクハラ被害を訴えた女性に非難を浴びせるなどセクハラ被害者への二次加害が生じたが、青瓦台(大統領府)は沈黙を続けた。文在寅大統領は朴前市長が亡くなったとき、秘書室を通じて朴市長とは長い縁があり衝撃を受けたと語っただけで、被害者には言及していない。

首長のセクハラは執務室という密室内で行われたため、証拠はなく証言する目撃者もいない。被害者の訴えと加害者の弁明だけが頼りである。ソウル市長のセクハラを訴えた被害者は異動で市長秘書となったが、秘書室は市長が抜てきした特別職が実権を握っている。市長就任と同時に秘書室に入り、退任すると免職となる。任期の最後まで市長と運命を共にする「殉葬組」と呼ばれている。

全容を明らかにしたい検察だが、秘書室幹部は口をつぐみ、被疑者が死亡したことから解明は困難を極めるとみられている。

在ニュージーランド韓国大使館で起きたセクハラ事件

相次ぐ左派首長のセクハラに沈黙を続ける青瓦台だが、駐ニュージーランド韓国大使館で起きたセクハラ事件が再浮上した。

7月28日、文在寅大統領はニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相と電話会談を行った。新型コロナウイルス感染症対策の協力を申し入れ、また、世界貿易機関(WTO)事務局長選に出馬した兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長への支持を呼びかけたが、会談の終わりでアーダーン首相が在NZ韓国大使館で発生したセクハラ事件に言及したのだ。

2017年11月、同大使館の参事官がコンピューターを見てほしいと現地職員を事務室に呼び、職員の尻を触りながら韓国ではこういうことをするとセクハラになると話すなど、3回に渡って接触したという。

韓国外交部は参事官に減給1か月の処分を下したが、被害者への謝罪は一切なかった。康京和外交部長官は、首脳会談で問題を提起された大統領に謝罪し、国民に向けた謝罪文を公にしたが、一方で被害者に対しては陳述内容の信憑性を確認しなければならないとして謝罪を拒み、ニュージーランドへの謝罪も韓国の格と主権を守るため簡単にはできないと拒絶した。

文在寅政権が放置してきたセクハラ問題が外交問題に発展しかねない状況を引き起こしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、4月は19.2万人増 予想上回る

ビジネス

EXCLUSIVE-米シティ、融資で多額損失発生も

ビジネス

イエレン米財務長官、FRB独立の重要性など主張へ 

ビジネス

米3月求人件数848.8万件、約3年ぶり低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中