最新記事

中国

安倍首相辞任表明、中国共産党系メディア「日米を離間させ、日本を取り込め!」

2020年8月31日(月)10時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

6.日本にはこのような方向に戦略転換することを阻止しようとする動きがあるだろうが、その動きが増大しないように中国は力を注がなければならない。そのために中国は、日中両国社会が絶え間なく接近する方向に動くためのファクターを積極的に作り上げていかなければならないのである。

7.それを実現するには紆余曲折があるだろうが、しかしこの道にまちがいはなく、日中関係にとっての戦略的価値がある方向性である。

概ね以上だが、何という野心丸出しの社説だろう。

上記の「1」にある、「ここ2年ほど」というのは、2018年4月から二階幹事長や公明党の山口代表をはじめ経済界の大物などが中国共産党中央委員会対外聯絡部の策略に引っかかってしまい、完全に習近平を絶賛する側に立ち始めた時期と一致する。これに関してはこれまでのコラムで書きまくってきたので、ここで列挙するのは省く。

その辺りから安倍首相の国賓としての中国訪問と、そのお返しとしての「習近平を国賓として日本に招待する」という計画が動き始めた。上記の「2」から「6」までをしっかりご覧いただければ、中国がいかに政界や経済界は言うに及ばずマスコミ界までをも親中に傾かせて、習近平国賓訪日を戦略的に動かしているかが明確になるだろう。

CCTVでは日本の東アジア地域における安全保障への野心を解説

8月29日、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは安倍首相の辞任表明に関する特集番組を組み、解説委員が以下のように言った。

――日本の本来の狙いは憲法改正と東アジア地域における安全保障の強化にある。安倍政権は後半からは抑制的になり、中国との友好を重んじるようになったが、アメリカは黙っていない。アメリカは必ず中距離弾道ミサイルの配備などに関してアメリカと足並みを揃えて協力するよう日本に強く要望してくる。中国にとってはポスト安倍がアメリカの意向に沿って動くか否かを注視することが肝要だ。

すなわち最後の2年では、中国は安倍政権を親中に傾かせることに成功してきたと中国は見ているということだ。だから次に誰が総理大臣になるかを中国は強い関心を以て分析している。

日本では「中国でも安倍首相が良かった」と言っていると、非常に「好意的な心情」として伝えているが、もう心の底まで中国の戦略に嵌(はま)ってしまっているとしか思えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中