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自由の行き過ぎ? マスクをするのがイヤで店員に催涙スプレー

Missouri Woman Pepper-Sprays Workers Who Asked Her to Wear a Face Mask

2020年8月5日(水)18時25分
セレン・モリス

トランプ支持のマスクをして警察支持集会に出る男性(ボストン、6月27日) Brian Snyder-REUTERS

<過剰とも思えるアメリカのマスク嫌いは「個人の自由」を懸けた戦い。11月の大統領選に向けてますますエスカレートする?>

米ミズーリ州のピザ店で8月2日、マスクをしていないことを理由に入店を断られた女性客(27歳)が、店員らに向けて催涙スプレーを噴射する事件が起きた。場所は、セントルイス市内サウス・リンドバーグ大通りにあるレストラン「インクレディブル・ピザ・カンパニー」。

通報を受けて警察が到着したのは午後4時30分ころ。マスクの着用を拒否するこの客に、店外に出るよう店員が求めたことがきっかけで激しい口論になったという。

女性客にはその後、傷害容疑で出頭命令が出された。

インクレディブル・ピザ・フランチャイズグループのマーケティング担当副社長、アンディ・ティームは、本誌に対してこう述べた。「ありがたいことに、巻き込まれた従業員たちは全員無事だ」

「各地のインクレディブル・ピザを訪れる数万の客のうちこれまでたった3人とはいえ、マスクを拒否した来店客がいたのは残念だ。公共の場でマスク着用を義務付けたセントルイス郡の規制に従おうとしなかったのだ」

「当社のメディアパートナーならびに周囲からの圧力によって、マスク着用に関する社会の意識が高まり、今後は、当店スタッフが来店客の入店を拒否しなくてもよくなることを望む。そうすれば、インクレディブル・ピザを訪れた来店客は、楽しく安全に時間を過ごせるようになるだろう」

セントルイス郡ならびにセントルイス市は、7月3日に新たな公衆衛生命令を発令。9歳以上の人は、屋内にいるとき、また屋外にいてもソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)が確保できないときは、常時マスクを着用することが義務づけられた。

セントルイスのライダ・クルーソン市長は発令時に、「マスクまたはフェイスカバーの着用義務化は、地域全体がこのウイルスとの戦いで後退せずに済むようにするための重要なステップだ」と述べていた。

「マスクの着用は、市中でのウイルス拡散速度を鈍らせると同時に、各企業が営業を継続し、人々が安全かつ責任ある方法で夏を楽しめるようにするための、効果的な方法だ」

マスク着用を求める従業員が被害に

マスクの着用を拒否するこうした揉め事は、これまでも全米で起きている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生して以降、従業員がマスク着用の方針に従うよう客に強く求めた結果、暴言を吐かれたり暴行を受けたりするケースは少なくない。

ワシントン州では、ピザ店「パパ・マーフィーズ」で、食事の提供を拒まれたマスクなしの女性客が、自分にはピザを受け取る権利があると主張し、従業員に怒鳴り散らした。客はその際に、障害を理由にした差別を禁止した法律「障害をもつアメリカ人法(ADA)」を引き合いに出し、自分には医学的な障害があるからマスクを着用する必要はないのだと主張した。

<参考記事>コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
<参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

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