最新記事

スポーツ

韓国でも女性スポーツ選手が自殺 22歳のトライアスリートを追い込んだセクハラといじめの実態

2020年7月16日(木)19時25分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

監督やチームドクターらからいじめを受け自殺したチェ・スクヒョン。YTN News / YouTube

<彼女が絶望したのはいじめやセクハラそのものよりも、救いを求めても応える人がいなかったことだった......>

先月26日、韓国のトライアスロン選手チェ・スクヒョンさんが22歳という若さで自ら命を絶ってしまった。スポーツ選手の自殺といえば、日本でも5月末に亡くなり、その後社会的な議論を呼んでいる木村花さんの死が頭をよぎる。偶然にも亡くなった年齢は両者とも22歳だった。木村花さんは誹謗中傷による自殺だと言われているが、韓国のチェ・スクヒョン選手を追い込んだものとは一体何だったのだろうか?

チェ・スクヒョン選手は1998年生まれの女子トライアスロン選手だった。水泳選手としてスポーツの世界に飛び込み、その後その過酷さから"鉄人レース"とも称されるトライアスロンの道に進み、韓国慶州市のトライアスロンチームに所属し活躍していた。

2015年台湾新北市で行われたASTCアジアトライアスロン選手権2015では3位に入賞するなど活躍を見せ、最近では去年の10月に行われた国際トライアスロンチャンピオンシップの女子エリートで14位の成績を収めていた。

そんなチェ・スクヒョン選手が、6月26日釜山の寮で死亡しているのが発見された。死亡直前に母親へ送信されたKakaoTalkのメッセージには、「お母さん、愛してる。あの人たちの罪を明るみにして」と書かれていたことから、自殺とみられている。

チームドクターが「極限に追い込み自殺させてやる」

その後、遺族が「チェ選手の自殺は所属していたチームの監督、スポーツ医師、一部の先輩選手からのいじめが原因」と訴え、韓国中が騒然となった。7月1日には、チェ選手の知人によって韓国大統領府のホームページへ「チェ・スクヒョン選手の死亡事件について徹底した捜査を追及する」という国民請願が立ち上がり、さらに世間の注目を集めることとなった。

さらに、遺族はチェ・スクヒョン選手への暴行現場で録音されたと思われる音声も公開した。殴る蹴るといった行為が約20分間も繰り返されていて、聞いているのもつらい音声だ。また、警察に相談していたチェ・スクヒョン選手の通話記録も公開されると、先輩から「パンを数万円分買ってこい」と命令され、買って戻るとそれを吐くまで食べさせられた、などのイジメも発覚した。

さらに、KBSニュースの報道によると、チェ選手が未成年だった頃にチーム内で飲酒を強制された過去があったこと、チームドクターから「(チェ選手が)心理治療を受けている間に極限に追い込み、自殺するように誘導してやる」などという発言もあったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中