最新記事

日本経済

新型コロナと五輪延期のダブルショックで日本は景気後退へ

Postponing Olympic Games Will Deal Serious Blow to Japanese Economy

2020年3月25日(水)16時55分
ダン・キャンチアン

新型コロナウイルスで東京オリンピックも吹き飛んだ(写真は3月13日、新宿の日本オリンピックミュージアム)Athit Perawongmetha-REUTERS /File Photo

<2月の訪日観光客は6割減、その上オリンピック開催も棚上げで2020年はマイナス成長──フィッチ>

東京オリンピックの延期は日本経済に深刻な打撃を与える、と欧米のアナリストらは警告している。

新型コロナウイルスが世界中で感染拡大を続けるなか、各国の選手やオリンピック委員会からの圧力を受けた国際オリンピック委員会(IOC)は3月24日、前例のない決定を行った。今年7月24日から8月9日まで東京で開催される予定だった2020年夏のオリンピックを、約1年延期することにしたのだ。

近代オリンピックは1896年に始まったが、2度の世界大戦の期間を除けば、大会が中止または延期されたことは1度もない。

東京都と大会組織委員会がまとめた最終予算によると、東京五輪・パラリンピックの大会予算は1兆3500億円となっている。

「大会の中止は日本経済にとって深刻な打撃となるが、来年まで延期となれば、打撃は和らぐだろう」と、CMCマーケッツのマイケル・ヒューソンは、IOCから延期が発表される前に本誌に語っていた。

ただ、オリンピックの延期は新型コロナウイルスのパンデミックと重なるダブルショックだ。

「新型コロナウイルス危機の影響で世界的に失業率が高まる恐れがある。そうなれば訪日する観客が減り、経済に負の影響が生じるだろう」と、ヒューソンは言う。「ウイルスの発祥地である中国に近いことやウイルス流行の余波で、日本への旅行に抵抗を感じる観客も多いかもしれない」

<参考記事>新世界オリンピックをつくろう

失速中の日本経済に追い打ち

格付け会社フィッチ・レーティングスのアナリストも同様の懸念を表明している。オリンピック開催の延期は、新型コロナウイルスの大流行が日本の消費、観光、輸出に与える負の効果をさらに悪化させる、というのだ。

2月に日本を訪れた観光客の数は、前月および前年同月比で60%減少した。中国からの観光客の数は、前月比91%、前年比で87%だった。

観光業の回復は、各国の海外渡航禁止や制限の成り行き次第だが、現在のような制限が続けば、日本の観光業の収益は2020年上半期で75%減少、下半期には50%減少するとアナリストは予想する。

パンデミックの前、日本経済はすでに下降傾向にあった。2019年の第4四半期に日本の経済成長は急激に縮小しており、フィッチは2020年の日本経済成長率をそれまでのマイナス0.2%からマイナス1.1%に下方修正した。

さらにオリンピックの延期が重なって、ほぼ確実に日本の経済は2四半期連続で縮小し、公式に「景気後退」と定義される状況に陥るだろう。

フィッチは「東京オリンピックの延期は、日本経済の成長を妨げるさらなる要因になると考えられる」と、本誌宛てのメモで述べた。

<参考記事>新型コロナショック対策:消費税減税も現金給付も100%間違いだ
<参考記事>日本で新型コロナの死亡率が低いのは、なぜなのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中