最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナと経済危機「アメリカはヨーロッパも救え」

I Am in Italy Amid the Coronavirus Crisis. America Must Act Now—And Act Big

2020年3月16日(月)18時55分
ニュート・ギングリッチ(元米下院議長)

同様に、トランプがヨーロッパ諸国からの入国を禁止したのもまったく正しい。事実、彼は選りすぐりの専門家たちのアドバイスに従っていた。

ABCによれば、米下院の監視委員会では12日、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長と米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長が証言し、トランプのヨーロッパからの入国禁止措置を支持したという。

レッドフィールドは「世界における新規感染者の70%超がヨーロッパと関係がある」点こそ目の前のリスクだと指摘。「ヨーロッパは新たな中国」であり、入国制限の根拠はそこにあると述べたという。

またABCによれば、渡航制限に感染拡大を抑制する大きな効果があるのかと問われたファウチは「間違いなくイエスだ」と答えたそうだ。

アメリカ国内では35を超える州で感染者が見つかっているが、「現時点でそのうち30州(の感染例)は、ヨーロッパからの旅行に関連している」とファウチは指摘した。「ヨーロッパからの感染源を断つ必要があるというのは、十分に説得力がある考え方だ」

一方で、取り組むべき大きな課題は公衆衛生と経済の両方の分野でいくつも残されている。

パンデミックの脅威を前に、準備は足りないよりやり過ぎるくらいがいいことは歴史が証明している。

高齢者とホームレス

アメリカ国内でもイタリアと同じくらいの致死率で犠牲者が出るようになれば、5000人、1万人いや1万5000人といった規模で人命が失われるだろう。感染拡大に歯止めがかからなければその割合はさらに高くなるかも知れない。

イタリアで犠牲者が増えた背景にはお国事情もある。イタリアの高齢化率は日本に次いで世界第2位。新型コロナウイルスは高齢者が感染すると症状が悪化しやすく、イタリアにおける死者の平均年齢は81歳だ。

だがアメリカにもアメリカ特有の弱点がある。ロサンゼルスやサンフランシスコ、ポートランドやシアトルといった大都会には数万人のホームレスの人々がいる。もしもともと栄養不良や他の健康問題を抱えているこうした人々に新型コロナウイルスの感染が広がり始めたら、被害は甚大なものになる可能性がある。

また、トランプの決断によって得られた時間的猶予を生かし、あらゆる社会的集団における健康上の脅威を検討し、それに応じて対応する必要もある。

また、最悪のケースに備えた計画を立て、大戦下で成果上げたような支援計画を進めるべきだろう。換気扇やマスク、集中治療室(ICU)、治療薬を十分に用意し、地域社会全体で検査を積極的に行えるようにすることが、生命を救い、パンデミックを食い止めるために最低限必要だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中