最新記事

感染症

感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「インフル猛威」のなぜ

2020年2月18日(火)16時31分
瀧口範子(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

1月29日付のロサンゼルス・タイムズ紙によると、「インフルエンザは効果的な治療法や比較的効果的なワクチンがあるほか、公的機関による感染者・死亡者数の発表、罹患するリスクがある人の数がわかるが、コロナウイルスは咳や熱、のどの痛みといった症状が出る前の感染者にどれだけ感染力があるのかなどわからないことが多い」ことが理由のようだ。

日常生活を見回してもマスクをしている人は圧倒的に少なく、今になってメディアが不安を煽っているわりには危機感はない。ましてやコロナウイルス肺炎はどこか遠くのアジアの話、という感じだ。

カリフォルニア州に住む日本人女性も、「通勤中ラジオでニュースを聞いているが、インフルエンザの報道は聞き覚えがない。アメリカでそんなに死者が出ていることも日本のメディアで知った。子供が通う学校でもコロナウイルスに関するメールはあったが、インフルエンザについては特になにもない」と話す。

アメリカほぼ全州が「赤い」地域に

CDCではインフルエンザの特別ページを設けて、1週間ごとに現状をアップデートしている。どこで流行しているかを示す地図では、ほぼ全州がインフルエンザ的な症状が高く見られる「赤い」地域になっている。そして、肺炎とインフルエンザによる死亡率は7.1%とあり、これは伝染病とみなされる死亡率7.2%のギリギリのラインである。

一縷(いちる)の希望もある。CDCの研究者らが携帯用テストキットを開発し、予防接種ワクチンの開発時間の短縮に役立てようとしているというものだ。「Mia(モバイル・インフルエンザ・アナリシス)」というこのキットは、A型ウイルスを対象としているが、その場でウイルスの採取や遺伝子解析ができ、これまで数週間かかったプロセスを半分にする。

現在はまだ動物実験段階だが、これが実用化できれば、ワクチン製造までの時間を8週間短縮できるという。変異するウイルスとの競争に少しでも役立つはずだ。

インフルエンザは、コロナウイルス肺炎と予防方法は似ている。こまめにしっかりと手を洗う。咳やくしゃみをしている人から遠ざかり、自分が咳、くしゃみをする場合はタオルや腕で口元を塞ぐ。病気だと思ったら、病院に行く前に関係機関に連絡する――。まずは基本行動をしっかりすることで、自分の身を守るしかない。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中