最新記事

宇宙ゴミ

30日、アメリカ上空で二つの衛星が衝突するおそれ

2020年1月29日(水)17時20分
松岡由希子

1983年に打ち上げられた宇宙望遠鏡IRAS NASA

<NASAの古い衛星2基が、アメリカ上空で、30日、衝突する可能性があることがわかった......>

#衝突せず、通過したようです。30日11時現在


ミッション終了後も軌道を周回し続けているアメリカ航空宇宙局(NASA)の古い衛星2基が、アメリカ北東部ピッツバーグの高度約900キロメートルの上空で、近々、衝突する可能性があることが明らかとなった。

1トンと85キロの衛星が衝突の可能性

米カリフォルニアのスタートアップ企業「レオ・ラボズ(LeoLabs)」では、独自のレーダーにより、低軌道で周回するスペースデブリ(宇宙ゴミ)を追跡している。

追跡データによると、1983年に打ち上げられた宇宙望遠鏡「IRAS」と1967年に打ち上げられた実験ペイロード「GGSE-4」が接近しており、「レオ・ラボズ」では、「2020年1月29日23時39分35秒(協定世界時、日本時間30日8時39分)に秒速14.7キロメートルで通過し、そのミスディスタンス(外れ距離)はわずか15メートルから30メートルと極めて近く、1%の確率で衝突する」との予測を1月27日、公式ツイッターに投稿した。


最新の予測では、ミスディスタンスが13メートルから87メートルに修正され、衝突する確率も0.1%に下がっているものの、衝突すれば、大量のスペースデブリが発生するおそれがある。

いずれの衛星もすでに地上と通信できない状態にあるため、回避行動を実行することはできない。また、いずれも軽量ではなく、長さ3.6メートル、幅3.24メートル、高さ2.05メートルの大型衛星「IRAS」は打ち上げ時の重さが1083キロで、小型「GGSE-4」でも85キロだ。

衝突すればスペースデブリの雲が形成される

豪フリンダース大学の宇宙考古学者アリス・ゴーマン准教授によると、これら2基の衛星が衝突すれば、小さい方が消滅してスペースデブリの雲が形成される一方、大きい方も多少の損傷は避けられず、これによってスペースデブリが生成されるという。

「レオ・ラボズ」は、公式ツイッターの投稿で「このような事象は、宇宙の持続可能性を推進する観点から、責任を持って衛星を軌道からタイムリーに離脱させる必要があることを示すものだ」と警鐘を鳴らしている。

スペースデブリの増加は深刻な課題だ。欧州宇宙機関(ESA)によると、2019年1月時点で、その総重量は8400トンを超えている。

国連のガイドラインはあるが......

国際連合のガイドラインでは、ミッション終了後25年以内に衛星を軌道から撤去するよう指示しているが、ガイドライン施行前に打ち上げられた「IRAS」や「GGSE-4」はその適用外となっている。

ゴーマン准教授は「この10年でスペースデブリの除去に取り組まなければ、同様の衝突が起こり、衛星の打ち上げや宇宙でのミッション実行が困難となるおそれがある」と懸念を示している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

パナマ大統領選、右派ムリノ氏勝利 投資・ビジネス促

ビジネス

財新・中国サービスPMI、4月52.5に低下 受注

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 第1四半期にアッ

ワールド

イスラエル、アルジャジーラの活動停止 安全保障の脅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中