最新記事

韓国

韓国、長引く不況を「ノージャパン運動」が覆い隠す

2019年12月27日(金)15時15分
佐々木和義

貧富の格差が進む韓国社会 ...... Kim Hong-Ji-REUTERS

<日本製品不買運動がはじまって4ヶ月余り、多くの韓国人やマスコミが日本や日本企業に与えたダメージを話題にするが ......>

韓国は例年12月になるとイルミネーションやクリスマス飾りで溢れ返り、旧正月の商戦がはじまる1月中旬まで続くが、今年は12月中旬を過ぎても例年のようなクリスマスムードは見られない。しかし、不況を話題にする人は少なく、「ノージャパン運動」への関心が長引く景気の低迷を覆い隠している。

日本や日本企業のダメージは話題になるが ......

日本製品不買運動がはじまって4か月余り、多くの韓国人やマスコミが日本や日本企業に与えたダメージを話題にする。

不買運動が広がった2019年8月以降、韓国ユニクロが賃貸契約が終了した複数の店舗を閉鎖すると、マスコミは不買運動の影響と取り上げ、オンワード樫山の撤退も運動の影響と報道された。撤退は以前からの売上不振によるもので、不買運動はひとつの要因に過ぎない。

不買運動とみられる影響では、韓国ユニクロを運営するエフアールコリアが700人規模で従業員を削減し、2019年12月にはロッテアサヒ酒類が年内に期限が満了する契約社員の雇用契約を延長しないことが明らかになっているが、職を失う韓国人に目が向けられることはない。

また、大韓航空がリストラを発表し、格安航空会社LCCのイースター航空は会社自体が売却に追い込まれ、ノージャパンの影響と囁かれたが、景気の低迷が背景にある。

大韓航空は12月11日、希望退職者を募集すると明らかにした。勤続15年以上でかつ50歳以上の一般職と客室乗務員が対象で、目標数は掲げていない。法定退職金に最大24ヶ月の賃金相当を上積みし、退職後も最長4年間、子女の高校や大学資金を支援する。国内景気の低迷と半導体需要減をはじめとする貨物の不振にノージャパン運動が追い打ちをかけ、10月には無給休職を実施、定期人事で108人の役員を79人に減らしている。

格安航空会社LLCのイースター航空は済州航空への売却が内定した。イースター航空はウォン高や海外旅行ブームで2016年から3年連続で黒字を計上した。しかし、拡大を図ってシンガポール線に導入したボーイング737MAXの運航が禁止されるとリース費用が嵩んでいった。さらに19年第2四半期には燃料の高騰や過当競争で業績が悪化し、ノージャパン運動の影響で日韓路線の利用者が激減すると経営は一気に悪化した。全従業員を対象に無給休職や長期休暇を実施し、夜勤自制や定時退社と年次休暇を促すなど、コスト削減の努力を続けたが好転する見込みはなく、筆頭株主のイースターホールディングスが売却を決めたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中