最新記事

中国

香港民主派圧勝、北京惨敗、そして日本は?

2019年11月27日(水)13時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

まず中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」の報道を見てみよう。

11月26日に、「香港特区第六回区議会選挙終わる」というタイトルで報道し、「終わった」という事実しか報道していない。5ヵ月にわたって、「暴徒」が外部勢力(=アメリカ)の扇動により香港社会の分裂を図ったため経済や民生が著しく阻害され、選挙当日においても「暴徒」が「国を愛し香港を愛する」選挙候補者に暴力的行為を行って選挙を妨害したとし、「従って目下の任務は暴力を制止して秩序を取り戻すことにある」と結論付けている。

これは新華社の電子版でも報道している。

6月以来、デモ参加者を「暴徒」、ときには「テロ分子」とさえ位置づけ、選挙前日まで「香港市民はみな、これら暴徒に激しい怒りを覚えている」と叫び続けていた中央テレビ局CCTVはすっかり鳴りを潜め、もっぱらアメリカの上院と下院の両方で議決された「香港人権・民主法案」に焦点を絞り始めた。もし本法案が発効したら、中国は断固「確固たる報復措置を取る!」「一切の悪い結果はアメリカが負う」と激しい意思表示をしている。「発効する」ということは即ち、「トランプ大統領が署名したら」ということを意味する。

「さあ、署名できるものなら、してみろ」という姿勢がCCTVの画面から溢れ出ている。こういう時にこそ、トランプ大統領には迷わず署名してほしいが、米中貿易戦争を米側に有利に運ぶために、習近平へのカードとして使うべく、まだ署名はしていない。 

日本は習近平を国賓として招聘すべきではない

中国が香港に対して高圧的になってきたのは経済力を蓄えてきたからで、経済力や軍事力が弱かったら、ここまで強硬な態度には出られない。

何度もくり返して申し訳ないが、1989年6月4日の天安門事件を受けて西側諸国が対中経済封鎖に出た時に、それを最初に破ったのは日本だ。当時の宇野首相は経済界のニーズに押されて「中国を孤立させるべきではない」と主張し、1991年には海部首相が円借款を再開し、西側諸国から背信行為として非難された。さらに1992年10月には天皇陛下訪中まで実現させてしまう。すると中国の目論み通り、アメリカも直ちに対中経済封鎖を解除して、西側諸国はわれ先にと中国への投資を競うようになるのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中