最新記事

サイエンス

200万年前の氷が採取されて2年、地球の気候変動に関わる分析が発表された

2019年11月8日(金)16時45分
松岡由希子

200万年前の地球環境のタイムカプセル...... Oregon State University

<これまでで最古の氷床コアが採取されたという発表から2年を経て、その分析が発表された......>

南極大陸東部で採取された200万年前の氷を分析したところ、古代において大気中の温暖効果ガス濃度と気象に関連があったとみられることがわかった。今後の気候変動に関する研究に役立つ成果として注目されている。

地球では、この100万年にわたって、寒冷な氷期と温暖な間氷期が10万年の周期で繰り返されてきたが、280万年前から120万年前は、その周期が4万年と短く、氷期も極端なものではなかったとみられている。

氷床や氷河を掘削してくりぬいた氷の試料、すなわち「氷床コア」は、気温や大気の成分などを推定できることから古気候学の研究で用いられている。今回、これまでで最古の氷床コアが採取されたという発表から2年を経て、その分析が発表された。

200万年前の氷床コア......

2007年に発表された研究プロジェクトでは、80万年前の氷床コアに閉じ込められた気泡中の二酸化炭素濃度と気温を分析し、「氷期と間氷期の周期を沿って気温が変化すると、これと並行して大気中の二酸化炭素濃度が変動する」ことを明らかにしている。

米プリンストン大学らの共同研究チームは、これよりも古い200万年前の氷床コアの二酸化炭素およびメタンの濃度と気温を分析し、2019年10月30日、その研究結果をまとめた論文を学術雑誌「ネイチャー」で公開した。研究結果によると、200万年前の間氷期の二酸化炭素濃度は、80万年前と同様に最高値にまで上昇した一方、氷期の二酸化炭素濃度は、80万年前ほど下がらなかった。

地球の軌道の変化が氷河期の中で氷期と間氷期の発生に影響を及ぼすことには有力な証拠があり、また、100万年前から200万年前の地球の気温と二酸化炭素濃度の関連はこれまで曖昧であったが、今回の分析で多くのことが明らかになった。

研究論文の共同著者である米オレゴン州立大学のエドワード・ブルック教授は「200万年前において二酸化炭素が気温と関係していることを示したことは、この研究において最も重要な成果のひとつだ。気候科学を理解し、将来の変化を予測するモデルを調整するうえで重要な基準となるだろう」と述べている。

さらに古い氷床コアを採取する

なお、この研究で用いられた氷床コアは、2015年から2016年のシーズンに、アメリカ南極探検隊の観測基地「マクマード基地」から約130マイル (約209キロメートル)地点で地下200メートルまで掘削して採取したものだ。

ブルック教授は「このエリアにどのくらいまで古いものが残されているのかは不明だ。200万年以上前のものがあるかもしれない」とし、再度、このエリアでの氷床コアの採取を行う方針を明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中