最新記事

海外ドラマ

女性たちをとりこにする波瀾万丈の歴史ファンタジー

The Moor the Merrier

2018年12月19日(水)18時00分
アンナ・メンタ

magc181219-fantasy02.jpg

ニューヨークのコミコンに集まった大勢の『アウトランダー』ファン Michael Kovac/GETTY IMAGES

ファン同士の交流も楽しみ

「1作目は小説作法の練習のつもりで書いた」と、ガバルドンは言う。91年に1作目が刊行された当時、彼女はアリゾナ州立大学環境研究センターの助教だった。

英語版の刷り部数はシリーズ合計で2500万部に迫る勢い。ドラマの放送が始まって原作の人気にさらに火が付いた。第9部は来年刊行される予定だが、印税の前払いは600万ドル超といわれている。

「最年少では10歳の男の子がファンレターをくれた」と、ガバルドン。「最年長は86歳の女性。でも大多数は30歳以上で、マナーを心得た大人。教育レベルが高い良識ある人たちよ」

そんな礼儀正しいファンも、ヒューアンがコミコンのステージに登場するとわれを忘れて黄色い声を上げた。ヒューアンはマッチョな長身で、古風な二枚目のマスク。イギリスのブックメーカーは次の007役の有力候補と騒いでいる。その予想が当たれば、スコットランド出身の俳優がジェームズ・ボンドを演じるのは初代のショーン・コネリー以来となる。

本人はこれほど騒がれるとは夢にも思わなかったと言う。謙虚な人柄も好感度アップにつながっているようだ。「原作が大ベストセラーだなんて知らなかったから最初は面食らった。でも素晴らしい経験だ」

ドラマの舞台もブームの恩恵を受けている。ハイランド地方の荒涼とした風景に魅せられたファンが続々と「聖地巡礼」に訪れているのだ。昨年スコットランドを訪れた外国人観光客は史上最高の320万人。まさに「アウトランダー効果」だと、スコットランド観光局のマルコム・ラフヘッドは満足げだ。

アン・ゴール(52)はまだスコットランドには行っていないが、地元のピッツバーグでファンイベントを催している。彼女の宝物は、シーズン1でジェイミーがクレアに贈った結婚指輪のレプリカだ。

だがこのドラマから得た最高の贈り物は世界中のファンとの交流だと話す。「『アウトランダー』の話で盛り上がって、すぐに打ち解けられる。今では世界中に素晴らしい仲間がいる」

<本誌2018年12月04日号掲載>



※12月4日号(11月27日発売)は「インターネットを超えるブロックチェーン」特集。ビットコインを生んだブロックチェーン技術は、仮想通貨だけにとどまるものではない。大企業や各国政府も採用を始め、データ記録方法の大革命が始まっているが、一体どんな影響を世界にもたらすのか。革新的技術の「これまで」と「これから」に迫った。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、カイロに代表団派遣 ガザ停戦巡り4日にCI

ワールド

フランスでもガザ反戦デモ拡大、警察が校舎占拠の学生

ビジネス

NY外為市場=ドル/円3週間ぶり安値、米雇用統計受

ビジネス

米国株式市場=急上昇、利下げ観測の強まりで アップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中