最新記事

言論の自由

国民からの批判が不快?トランプ政権がホワイトハウス周辺のデモ規制を提案

New Rules Would Restrict Free Speech Near White House

2018年10月17日(水)19時00分
ロビン・ウレビッチ(キャピタル&メイン)

バラク・オバマの大統領就任式の日、ワシントンのナショナル・モールを埋め尽くした参加者。式が行われる国会議事堂を背に見た光景(2009年1月20日)Brian Snyder-REUTERS

<反対されたり抗議されることに耐えられないトランプ政権が、ホワイトハウスなどワシントンでの抗議活動の規制を提案。キング牧師の「私には夢がある」演説など、アメリカの民主主義を作ってきた偉大な集会の場がなくなりかねない>

トランプ政権は、ワシントンの中心部を東西に広がるナショナルモールや近隣の公園、広場での抗議活動を、新たな規制で制限しようとしている。ホワイトハウスとその周辺の土地建物を管理する米国立公園局は、政府の官報でこの新規制案を公表した。

公園局によれば、新規制は所定の改訂にすぎない。だがこの案に反対する人々の多くは、この新規制を、自由で民主的なアメリカという国の独自性を示す記念碑が点在する場所で、国民の集会と言論の自由を抑制する試みとみている。

ホワイトハウス前の広場には、国民が国家の問題に関して声を上げ、大統領に訴えた歴史がある。新規制では、ホワイトハウスの周辺はほぼ封鎖され、立ち入りが許されるのは幅約1.5メートルの歩道だけになる。

1917年、婦人参政権を求める活動家たちはホワイトハウスの前でピケを張って権利を獲得したが、今度の新規制の下であれば、活動家たちは一般開放された狭苦しい空間にぎゅうぎゅう詰めで、とても入りきらなかっただろう。

webw181017-whitehouse.jpgホワイトハウスの前に集結したウィメンズ・マーチ(女性たちの行進)の参加者たち(2017年1月) Jonathan Ernst-REUTERS


カナダからテキサス州を結ぶ長距離石油パイプライン、キーストーンXL石油パイプラインの設置に抗議する環境保護派の2014年のデモでは、デモ隊はプラスチック製のジップタイでホワイトハウスのフェンスに自分の体を括り付けた。数千人が逮捕されたが、こうしたやり方も不可能になる。

すでに立ち入り禁止状態

「ホワイトハウス前の歩道で逮捕されることは、活動家にとって強力な象徴としての価値があった」と、米自由人権協会(ACLU)ワシントンDC支部で法務を担当するアーサー・スピッツァーは、言う。

ホワイトハウス周辺の一部地域は、不審者が柵を飛び越えて敷地内への侵入を図った事件をきっかけに、すでに暫定的に歩行者立ち入り禁止となっている。こうした事件を防止するための新たな防護柵は設置されたが、新しい規制が実施されれば、一帯は正式に立ち入り禁止となるだろう。

トランプ政権のイスラム教国からの旅行禁止令や、不法移民の子供を親から引き離す方針に反発して、自然発生的な抗議活動も行われてきたが、新規制のもとではこうしたイベントでは演台や音響システムを使うことができなくなるだろう。装置の使用に、許可が必要になるからだ。

国立公園局のブレント・エベリット広報官はメールで取材に答え、新規制は最後の規制改訂以降に建設された新しいモニュメント(朝鮮戦争退役軍人記念館やベトナム退役軍人記念館、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念館)のための規定だと説明。そしてホワイトハウスに関する規制の変更は、シークレットサービスの要請によることを認めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中