最新記事

米トルコ関係

【記者殺害疑惑】サウジの悪事?のおかげで歩み寄ったアメリカとトルコ

Erdogan Frees U.S. Pastor While Still Managing to Embarrass Trump

2018年10月15日(月)19時42分
マイケル・ハーシュ

米トルコ関係は2016年のクーデター未遂事件以降、悪化してきた。

クーデター未遂後、反エルドアン派の聖職者でアメリカ在住のフェトフッラー・ギュレンと関係したという容疑で、トルコ国内のアメリカ領事館で働くアメリカ人やトルコ人が逮捕された。エルドアンは、ギュレンが率いるイスラム勢力「ギュレン運動」(トルコ当局からはテロ組織に指定)やクルド労働者党(PKK)をアメリカ政府が支援していると疑ってきたが、アメリカはギュレンの引き渡しを拒んできた。

トルコ当局が、ギュレンの関係者だとする容疑をでっちあげてブランソンを逮捕したのもそれに対する報復だった。ブランソンはノースカロライナ州出身のキリスト教の牧師で過去20年以上にわたってトルコに在住していた。

ブランソン釈放と引き換えにエルドアンは見返りを得たのだろうか。アメリカとの間に取引があったとすれば、それは今後明らかになってくるはずだ。「取引の条件は何かを見きわめるには、今後トルコに対する制裁措置のどれが取り消されるかを見ていればいい」と、シンクタンク「民主主義防衛財団」のマーブ・タヒログルは言う。

互いに必要としている自覚はある

バーンズに言わせれば、実際に崖から転がり落ちることなく目的を達成したという意味で、トランプ政権もトルコも全体的に瀬戸際外交をうまくやりおおせてきた。「最後までブランソン牧師を守り抜いた点では、トランプ政権も賞賛に値すると認めざるをえない」とバーンズは言う。

同時にトランプ政権は、NATO加盟国であるトルコがロシアの地対空ミサイルシステムS-400を購入するという暴挙に出た後も対話は維持し、エルドアンがロシアのウラジーミル・プーチン大統領の手中に落ちることを防いできた。

「(トルコとアメリカの関係は)容易ではないが、両国とも、互いを必要としていることは自覚している」とバーンズは言う。

ムハンマドが本当にカショギ失踪の黒幕だったとすれば、図らずもそれはアメリカとトルコに最接近の機会を与えてしまったかもしれない。

(翻訳:村井裕美)

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・サウジ、防衛協定で合意間近=ホワイトハウス

ビジネス

米ズーム、通期の利益・売上高見通しを上方修正 前四

ワールド

米にイランから支援要請、大統領ヘリ墜落で 輸送問題

ビジネス

FDIC総裁が辞意、組織内のセクハラなど責任追及の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中