最新記事

防災

東京で数千人死亡の試算も 台風やゲリラ豪雨急増で大都市洪水の対策急がれる

2018年9月12日(水)18時58分

9月12日、地震への備えの重要性は昔から認識されてきた日本だが、近年、大規模な台風に次々と見舞われ、新たな自然災害の脅威に直面している――洪水だ。写真は洪水に備えたボート。葛飾区で8月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

地震への備えの重要性は昔から認識されてきた日本だが、近年、大規模な台風に次々と見舞われ、新たな自然災害の脅威に直面している――洪水だ。

東京で、大雨により河川の堤防が決壊し洪水が起きた場合、海抜の低い東部地域では数千人が死亡、500万人以上が避難する事態になるとの専門家の見方もある。

東京だけではない。東京大学特任教授の片田敏孝氏は地球温暖化との関連で、日本全体で短時間に大量の雨が降る現象が増えていると指摘。

「日本の3大都市圏は、いずれも大きな河川の最下流部で、なおかつ(海抜)ゼロメートル。その中で、こんな(記録的な)雨が降り出した。台風も巨大化している。国家的な危機管理の問題であり、いわば国難と言われるような状況に、日本の大都市圏は置かれているという認識でいる」と話す。

7月には、西日本の一部で1000ミリを超える大雨により河川の堤防が決壊、土砂崩れで家屋が倒壊し200人以上が犠牲となるという36年ぶりの災害が起きた。

『首都水没』の著書があるリバーフロント研究所の土屋信行氏は「こんなことがあれば、東京ははっきり言って、壊滅的な打撃を受けるだろうと思う」と語る。

特に危険なのは、約150万人が住む荒川沿いの海抜ゼロメートル地帯。土木学会は6月、この地域で大規模な洪水が起こった場合、死者2000人超、被害額は62兆円に及ぶとの試算を公表した。

政府と地方自治体は近年、ダムや貯水池、堤防などを建設し、水害対策を強化していきた。しかし、内閣官房参与の藤井聡氏は、建設のペースが遅すぎるとみている。

同氏はロイターの取材に「全国各地に、予算さえつけば迅速にできるところがたくさんある。それは可及的速やかに対策していく必要がある。その財源に関しては国債を充当することが適切」と述べた。

国土交通省は8月、来年度予算の概算要求で、水害対策の推進のために前年当初比3割増となる5273億円を要求した。堤防のかさ上げや、避難警戒体制構築などが含まれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の武器供給停止は誤ったメッセージ、駐米イスラエル

ビジネス

カナダ金融システム、金利上昇対応と資産価格調整がリ

ワールド

イスラエル首相、強硬姿勢崩さず 休戦交渉不調に終わ

ビジネス

Tモバイルとベライゾン、USセルラーの一部事業買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中