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マレーシアのマハテーィル首相、NYでトランプ批判 任期半ばでアンワル氏に首相禅譲を再確認

2018年9月30日(日)14時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)


政治家、公務員の資産公開

マハティール首相は「大事なことは(今は与党の)4つの政党が協力できる体制を維持することである。そのためには過去を忘れて現在直面するナジブ時代の清算という問題に集中しよう」と述べて、マハティール首相は自らが首相に留まる間の重要な仕事の一つがナジブ前政権による汚職体質の一掃であることを強調した。

それはさらに「国家指導者たちは腐敗や汚職とは無縁な清廉さが求められる。さもないと腐敗や汚職が国中に蔓延する結果になる」という発言や「今我々は腐敗や汚職を削減、いや全滅させるために努力している。前政権時代の悪弊を一層させる努力に国民は大きな期待を抱いている」との発言にもそうしたマハテーィル政権の姿勢が表れている。

そして汚職体質を払しょくするために「政治家だけでなく公務員は全ての資産、不動産、収入を明らかにする必要がある」と政治家、公務員の資産公開を今後積極的に進める考えを明らかにした。

マレーシアではナジブ前首相が政府系投資ファンドの資金不正流用容疑で逮捕されて捜査が進んでいるが、9月27日にはナジブ氏の妻ロスマ・マンソール夫人への事情聴取も本格化、近く逮捕されるとの報道も出ており、前政権の汚職体質への断罪が着々と進んでいる。

「一貫性ない」とトランプ批判も

一方でマハティール首相は9月26日の外交問題評議会の席ではトランプ米大統領について「その外交がアジアでの米国政府の取り組みを阻害している」との認識を示した。

その理由としてマハティール首相はトランプ大統領が「数時間のうちに意見を変える」「一貫性のない人物」と歯に衣着せぬ手厳しい批判を展開した。その上で「こうした人物に対処するのは大きな問題だ」とも述べた。

特に現在米政府が中国との間で「貿易戦争」状態になっていることについて「中国には4000年の歴史がある。中国とは共存、共生する方策を学ぶ必要がある」と米政府の対中外交の姿勢を批判した。


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大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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